一章 ページ1
ある平日の昼下がり、滑滑した肌触りのおそらく新品であろう、綺麗な机をぐるりと囲んで、九人の男たちが集まっていた。
「え〜それでは被告は有罪か無罪か…」と話し始めた九号の話を
「ちょっとちょっと、こう言うのは先に飲み物頼もうよ。ほら、映画でもあったでしょ」と、やたら眠そうな顔つきの七号が遮った。
「はい!はい!俺コーラ!」
「じゃあ僕は三ツ矢サイダー」
そう言って身を乗り出す五号と二号。
五号は、一緒にいる男たちの風貌から、恐らく学生では無いと推測できるものの「彼は五歳である」と紹介されてしまえば納得できるあどけなさが残っていた。
二号は、僕と言う一人称が彼の為にある、と言わんばかりの可愛い顔立ちの男で、どちらにせよ年相応には見えない。
「分かった、じゃあちょっと待って。覚えられないからメモとるわ」
そう言って渋々九号がメモを取り出す。
「え〜っと大ちゃんがコーラで…」と口に出す男に、
「ダメだよ!俺たちは陪審員なんだから、ちゃんと番号で呼び合わなきゃ」
と今度は三号が彼にダメ出しをした。
長い睫毛と目元にあるホクロのせいか、少し憂さを帯びたその綺麗な顔立ちをしかめながら、彼は大真面目に指摘した。
「何だよ、細かいな」
そうやって少し不服そうに苦笑しながら、九号は右回りで順番にオーダーを取り始める。「よし、じゃあ8はコーヒーでいいよね?」
彼は最後に、そうやって自分の右隣に座る男の注文を、返事を聞かぬままメモに書き記した。それに対して、隣の男は何も不平を漏らさず、むしろ少し心地良さそうに、うん、と頷いた。そんな様子を三号はニコニコと微笑みながら眺めている。
「でもこれ誰が買いに行くの?」
そうやって意見を述べたのは一号だった。
ここに集まる男達は皆、少なくとも世間と比べれば驚くほど整った容姿をしているにも関わらず、彼はそれでいて尚、埋もれる事のない輝きを放っていた。
「俺、行こうか?」
そう申し出たのは、その発言に篭った優しさと見た目にギャップを感じる風貌の、何とも色気のある男だった。
「さすが6号!」
そうやって嬉しそうに眠そうな眼を細めて煽てあげる七号に
「お前が言い出したんだろ」と笑いながら
「先に始めといてよ」
そう言って颯爽と部屋を出て行った。
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作者名:田中 | 作成日時:2020年5月8日 21時