モノクロダイアリー【狗巻棘】

2. 火照る頬と壊れたエアコン ページ11

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「＿＿、……げ、棘！！」






いきなり耳をつんざくように聞こえた声に、俺は飛び起きる。




授業中だったかと周りを見るが、いるのはクラスメイトの2人だけだった。


　

その2人のうちの1人＿_真希は眼鏡の奥から俺のことを眉をひそめて見ていて、もう片方＿＿パンダはパンダという出で立ちのせいで表情はよくわからないが眉が下がってる気がする。






「もう授業始まんぞ」






心なしか、真希の声がいつもより優しい。

……心配させたか。






「しゃけ」






大丈夫だという意味もこめて頷くと、2人は顔を見合わせた。






「そうか？棘が寝るなんて珍しいからな」


「ちゃんと寝てんの？」


「しゃけ」






なんでもない。ただ、寝てただけだ。


ただ、それを伝えるのもなんだか億劫で、真希に対しての肯定だけで留めた。







"え！？は？どういうことですか？！"


"久しぶりって、知り合い？！"






当然、1限目は1年からの質問責めにあった。


悟がにやにやして眺めてることから、急な授業の変更もヤツのせいだろう。





くそ。やられた。


まぶたを閉じれば、夢にまで見た色摩柚季が脳裏に浮かぶ。





＿＿＿＿＿"改めましてはじめまして"






……駄目だ。暑い。




いまだぼーっとしている頭をどうしようかと窓を開けて外を見れば、深い緑と東京というには似つかわしくない古風な建物が目に入る。




まだ残暑が残る季節のはずなのに、頬に当たる外の風が涼しく感じるのは、きっと壊れたエアコンと長袖の制服のせいだ。

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