紫式部色 ページ47
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すん、と鼻を通る古書の香り。
手についた埃を優しく払い、ペンを持つ。
歓迎会でお腹いっぱいになってしまったので睡魔もやってくるが、ブラックコーヒーで誤魔化した。そう、受験生のアレと少しも変わらない。
柔らかなニブの万年筆を忙しく紙につけた。
「英語の方は大丈夫だから、問題は漢字のほうね。」
「漢和辞典、というか人名事典で練習してたんですが………」
「ん、漢字なのに、筆記体がゲルマン語の形にそっくりになっちゃってる。練習ね。」
跳ねた茶髪に肩を落とす。日本語の止めや払いをすっかり忘れてしまってこれでは本当に異邦人だと思われてしまう。先生が去年の誕生日プレゼントにくれたら辞典も心なしかくたびれてしまっていた。ここからどれだけ書けばいいのか。
「シャーペン、一旦士郎に借りよう。万年筆じゃ時間がもったいないわ」
「うう、」
愛用のペンがずいっと奪われるのを尻目に、士郎の持っている無骨なシャープペンシルを手に持つ。丸めの軸だがやはり勝手が違うので筆圧がつけにくかった。
「あっちではこれ一本だけだったの？」
「すられちゃうので極力高価なものは持たないようにしたんです。」
いや、それも『練習』の一つだったのだろう。
こんな目立つペンだったら一個であろうともすられる可能性はある。実際に何度か盗られかけた。それをどうにかするのが先生からの課題だったのかもしれない。
力仕事だけではどうにもならないという。
「でも行ったのって南米でしょ？ゲルマン語って」
「ドイツの文化に触れたほうがいい＿＿＿とは言っていました。意図は……私にはちょっとわかりませんね。バイリンガルって自称できるくらいには使えますよ」
その瞬間ムッと眉を寄せた大河お姉さん。そういえば、あの日からお姉さんは先生のことが苦手だった。あまり話しに出されては嫌だろう。たった数年だったのに、あっちに慣れすぎてしまった自分も自分だ。
しかし、眉を寄せているのは大河お姉さんだけではなかった。
前に座る士郎も眉間にシワがよっている。
「士郎」
「あ、いや、気にしないでくれ、ちょっとな」
「瑩音ちゃん、士郎はゲルマン語だとかバイリンガルだとかがわからないの」
その一言におし黙る士郎。ハッと気づいて口に手を当てる。
そういえば自分たちはまだ中学生だ。わからないのも当然だ。
でも眉を寄せた士郎の顔が可笑しくて、思わず吹き出してしまった。
そのあと普通に怒られた
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タマモキャットガチ勢(白い犬)(プロフ) - ゆっくりさん» お！！！？？慈悲深き神！？嬉しいです〜〜。勘違いじゃなければ短編集の方でもコメントを頂きましたかね？その一言で２０話は投稿できます〜〜本当に感謝！ (2019年11月21日 19時) (
レス) id: 1561dbe350 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり(プロフ) - 大好きです。 (2019年11月20日 22時) (レス) id: a6728b9117 (このIDを非表示/違反報告)
タマモキャットガチ勢(白い犬)(プロフ) - ぐみさん» ありがとうございます！この作品を優先的に最終話まで行かせたい………ヴッ (2019年7月1日 17時) (レス) id: 1561dbe350 (このIDを非表示/違反報告)
ぐみ(プロフ) - 我が生涯にいっぺんの悔いなし(血涙)この作品も読ませてもらってます.....頑張ってください.... (2019年7月1日 2時) (レス) id: 46a85766e5 (このIDを非表示/違反報告)
赤眼のわかめ - はい！この作品も最後までついて行きます！ (2019年6月30日 15時) (レス) id: abeb3a86ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わんころ | 作成日時：2019年6月2日 16時
