蓬 ページ5
・
クイっと着物の裾を引く
「ああご飯の時間か。ありがとうね瑩音」
コクリと頷いた
この家は暖かい。ほんの数週間過ごしているうちにそれは嫌という程わかった
私の言いたくないことも触れずに置いていてくれる
服だって用意してもらった、柔らかいし優しい。
＿＿＿＿＿吐き気がする
また首を傾げた 今私は何を思った？最近こういうことが度々あるのだがなんなのだろう？
前の自分にはよくあったのだろうか？どうなのだろう
霞のように揺れる視界はおぼつかないし怖い。
「士郎」
「ああ瑩音 爺さん呼んでくれたか？」
「……」
「ありがとう」
今日は士郎の当番
てっきり私達を引き取るほどなら家事力もあるだろうと思った切嗣さんの家事力は底辺だった
まさかの事態に目を向く私達と困ったように頭を掻く切嗣さん
しかしここで切嗣さんが一手を打っていた。そのあたりは抜けておらず周到である。
藤村組
いわゆるヤの付く職業の家だっただが人々は優しく温かい
この家が藤村組の管轄のようでちょくちょくお手伝いさんが助けてくれのだ
＿＿＿＿＿しかしそれではいけない
最初は同じ年齢(推定)で同じ境遇の士郎とは距離があったように思うが、そんなことも言っていられない。私達は自分で料理することにした、だが基礎知識もない
なのでこうして藤村組のお手伝いさんに教わり当番制で作っているのだった
「わー士郎今日は野菜炒め？」
「ああ 爺さんも早く座れ」
「皿運ぶの手伝うよ」
かちゃかちゃと食器がぶつかり合う音。そのまま自分が何もしないのもアレなので箸を配る
「瑩音 コップ取ってくれないか？」
「ん」
エプロン姿の士郎の前を通る
「それにしても二人とも料理上手になったね」
ははははと士郎の苦笑い
そういえば最初は今日から自分たちが作る！切嗣さんは休んで！と始めたものだ
最初に二人で作った卵焼きは少し焦げたが切嗣さんは文句も言わずに食べてくれた
懐かしい思い出、………というやつなのだろうか。
「美味しい？」
「美味しいよ」
少し味音痴疑惑のある切嗣さんだが美味しそうに見える
私も手を合わせて野菜炒めのキャベツを口に入れた
「む また腕が上がっている………」
「俺も瑩音に負けてばっかりじゃいられないからな」
私は女子として今度はもっと難しい料理に挑戦しようと決意するのだった。
それに…ちらりと口を動かす切嗣さんに目を向ける。
「うん美味しい。」
負けてはいられない。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 53人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
タマモキャットガチ勢(白い犬)(プロフ) - ゆっくりさん» お！！！？？慈悲深き神！？嬉しいです〜〜。勘違いじゃなければ短編集の方でもコメントを頂きましたかね？その一言で２０話は投稿できます〜〜本当に感謝！ (2019年11月21日 19時) (
レス) id: 1561dbe350 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり(プロフ) - 大好きです。 (2019年11月20日 22時) (レス) id: a6728b9117 (このIDを非表示/違反報告)
タマモキャットガチ勢(白い犬)(プロフ) - ぐみさん» ありがとうございます！この作品を優先的に最終話まで行かせたい………ヴッ (2019年7月1日 17時) (レス) id: 1561dbe350 (このIDを非表示/違反報告)
ぐみ(プロフ) - 我が生涯にいっぺんの悔いなし(血涙)この作品も読ませてもらってます.....頑張ってください.... (2019年7月1日 2時) (レス) id: 46a85766e5 (このIDを非表示/違反報告)
赤眼のわかめ - はい！この作品も最後までついて行きます！ (2019年6月30日 15時) (レス) id: abeb3a86ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わんころ | 作成日時：2019年6月2日 16時
