検索窓
今日:18 hit、昨日:1 hit、合計:37,312 hit

弟切草 ページ35



「_____先生?」


静寂に響いた声は私だった、動揺が足からゆるりと蛇のように上がってくる。
寒気と頭痛で脳が崩れていくような錯覚が頭をよぎった。痛い、訳がわからない。痛い。ー
トワイス先生は眉ひとつ変えず、言葉を淡々と紡いでいく。


「忘れたのかい?___ああ、いいさ。此れは私がしたのだからな。」

何を言っている?
_____■せ


「君は何人傷つけるんだい?」


どういう事?
_____■せ


「君の力がどれだけの恐怖をはらんでいるのか理解しているのかい?」


どういう意味
_____■せ
脳がふつふつと煮える。怒りと慟哭で、霧に包まれたように掠れていく。
震える私の体も茫然としたままの私の顔も、何も目に入らないように告げる。
対談だった、座談でもない、会談でもない、双方の目が交わった。
トワイス先生は言葉を止めない。



「__なんで、じゃないよ。士郎君の手が腫れてるのは君のせいじゃないのかい」
「違う、此れは瑩音じゃ!!!」
「君は、右利きだろう?右手を握れるのかい?」



ぼろぼろと崩れていく、ゆらゆらと揺れていく。髪がザワザワと風に揺れた。
旋風が吹く、ここだけ切り取ったかのように冷たく、肌を裂く。
痛い、頭が痛い、なんで。頭をわんわんとこだまする声は不愉快だった、痛快だった。

____奪っていくよ。こいつは奪っていく
何を?
____■せ
なんで?




全部、奪っていくから(・・・・・・・)


脳を支配する声は従順だった、声を張り上げることもなく冷静だった。
冷たい水のようなさざめく声。分かった、理解した。目が冴えるように濁っていく。
血が泡立つようだった、どろどろと体が溶けてしまいそうな思考。

私から奪う。あの月はいつだって、私の存在を否定する。私の、全てを、私の未来を。
従えばいい、全て放棄するんだ。私は正しい、これはあるべき、規則を守れ。戒めを。
そうだ、もういい、こいつは、_____





「瑩音!!!!」

_____殺せ

















「_____」


発した声はまたもや私だった。霧が晴れていく。頭痛が搔き消える。
振り上げられた拳も私のもので、かちりかちりと鳴る長い爪も私の物。
手についた赤は先生のものだった。ぴちゃんぴちゃんと音が聞こえるように血が滴る。

私の拳を掴んだまま、先生は目を細めた。




「ほら、君はまた誰かを傷つける。」





無責任な脳の声は、聞こえなくなってしまった。




紫風信子→←芸香



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (24 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
53人がお気に入り
設定タグ:Fate/staynight , 型月
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

タマモキャットガチ勢(白い犬)(プロフ) - ゆっくりさん» お!!!??慈悲深き神!?嬉しいです〜〜。勘違いじゃなければ短編集の方でもコメントを頂きましたかね?その一言で20話は投稿できます〜〜本当に感謝! (2019年11月21日 19時) (レス) id: 1561dbe350 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり(プロフ) - 大好きです。 (2019年11月20日 22時) (レス) id: a6728b9117 (このIDを非表示/違反報告)
タマモキャットガチ勢(白い犬)(プロフ) - ぐみさん» ありがとうございます!この作品を優先的に最終話まで行かせたい………ヴッ (2019年7月1日 17時) (レス) id: 1561dbe350 (このIDを非表示/違反報告)
ぐみ(プロフ) - 我が生涯にいっぺんの悔いなし(血涙)この作品も読ませてもらってます.....頑張ってください.... (2019年7月1日 2時) (レス) id: 46a85766e5 (このIDを非表示/違反報告)
赤眼のわかめ - はい!この作品も最後までついて行きます! (2019年6月30日 15時) (レス) id: abeb3a86ef (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:わんころ | 作成日時:2019年6月2日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。