金木犀 ページ11
・
「瑩音！？」
大きく狼狽える士郎を腕の中にぎゅっと閉じ込めた
なんでなのかわからないと言った表情を見て瞼を伏せる。
困惑した体は少し自分より大きかったけど包み込むことができた。
「なんで！こんな！？」
「私にだって眠れない時はある」
その一言でふっと抵抗が弱まった。
ゆっくりと目を伏せる
「＿＿＿＿＿私だって悪夢を見る。
でもそういう時は切嗣さんが一緒に眠ってくれた。だから士郎も一緒に寝るといい」
せわしなく動かしていた手がだらりと落ちた
その体が溢れそうで怖くなってもっと強く抱きしめる
士郎。
「私だって怖いし眠れない士郎の苦しさだってわかんない
でも眠れないなら私の心臓の音を聞かせることならできる
怖いなら子守唄だって歌える」
赤銅色の髪がゆらりとゆれた
頭がガンガンとハンマーで殴られたように痛む
ずっとずっと痛い
でも＿＿＿＿＿誰かがそばにいてくれたら この痛みが分け合えるのなら
きっと
「……ありがとな瑩音」
「うん」
頭が割れそうに痛いのに温かいという感覚が消えることなく身にしみた
士郎の部屋から入ってくる月光が堪らなく苦しい
トクトクと音を立てる心臓の鼓動にこの人は生きているとはっきり告げてくれる
「頭は痛くないのか？」
「………痛いけど大丈夫」
今は大丈夫。だって側に誰かがいてくれるから
痛くても大丈夫。
二人で抱きしめながらゆっくりと布団に倒れた。
「切嗣さんはなんで外国に行くのか教えてくれないね」
「……なんでなんだろな いつか教えてくれるかな」
その言葉にふふと笑みが漏れた
「二年間＿＿＿＿＿士郎だって切嗣さんにずっと何か頼んでたでしょ？
剣道のことだけじゃなくて何か別のこと」
ギクリと大きく動く体に図星だなと確信した
「＿＿＿＿＿うん 秘密でしょ？
秘密だっていいことだとおもう 良かったらいつか教えて秘密」
頭が痛い
眠るのが怖い止まるのが怖い名前を呼ばれるのが怖い生きていくのが怖い
月が怖い
＿＿＿＿＿頭が痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
あ ＿だめだ＿＿＿＿
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
「ーーーー大丈夫か瑩音？」
痛い
ぶわりと。冷や汗が垂れた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 53人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
タマモキャットガチ勢(白い犬)(プロフ) - ゆっくりさん» お！！！？？慈悲深き神！？嬉しいです〜〜。勘違いじゃなければ短編集の方でもコメントを頂きましたかね？その一言で２０話は投稿できます〜〜本当に感謝！ (2019年11月21日 19時) (
レス) id: 1561dbe350 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり(プロフ) - 大好きです。 (2019年11月20日 22時) (レス) id: a6728b9117 (このIDを非表示/違反報告)
タマモキャットガチ勢(白い犬)(プロフ) - ぐみさん» ありがとうございます！この作品を優先的に最終話まで行かせたい………ヴッ (2019年7月1日 17時) (レス) id: 1561dbe350 (このIDを非表示/違反報告)
ぐみ(プロフ) - 我が生涯にいっぺんの悔いなし(血涙)この作品も読ませてもらってます.....頑張ってください.... (2019年7月1日 2時) (レス) id: 46a85766e5 (このIDを非表示/違反報告)
赤眼のわかめ - はい！この作品も最後までついて行きます！ (2019年6月30日 15時) (レス) id: abeb3a86ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わんころ | 作成日時：2019年6月2日 16時
