2話 ページ2
チャイムの音で意識が浮上し、ゆっくりと覚醒する。
いつの間にか眠ってしまった様だ。
ごめんねセンセー。
と言うか、あるあるじゃ無い？
ぐっすり眠ってたハズなのに、なぜかチャイムきっかりで目が醒めるの。
ゆっくり頭をもたげて時計を見る。
うわ、次持久走じゃん。
出たよ年一の謎授業、無駄に疲れるだけのやつ。
マァ、捏島君がかっこいいから良いんだけど。
グラウンドに出てみるとあらまぁ見事な曇天。
もしも今日雨が降ったなら私の命は家まで保たないだろう。
早起きは三文の徳というじゃない。
朝に余った時間を、前髪との格闘に充てた私は報われないのか。
抑もの話、長距離走で前髪とサヨナラするのはわかってるんだけどね。
タイム計測のためにペアを作るんだそうだが、此処は声をかけるべきであろう。
今までの私はもう居ないのだ。
彼は女嫌いだと聞く。
「こんな時だけ、大先生と人格が入れ替わってしまえばいいのに」
などと考えてしまう私にはほとほと愛想が尽きる。
突っぱねられる可能性だって十二分にある。
それでも、言わずに後悔するよりは当たって砕けた方が幾分かマシだろう。
恋愛に於いて負った傷はオトメの勲章だから。
「ア、あの、捏島君…！」
嗚呼なんて嘆かわしいのだろう。勇気ある少女の声は、その他大勢に紛れてしまった。
彼女のライバルであるカノジョたち、それに如何にもな体育会系の男たち。
サッカー部のエースの人気は伊達じゃ無いのね。
彼にとっては所詮n分の1なのだ。
もういっそ、厚かましくなってみようか。
だから
「捏島君！私と長距離走、ペア組んでいただけませんか？」
まるで一世一代の告白だ。
顔を真っ赤にして、所々吃りそうになりそう。
だけどまっすぐな瞳が彼を射抜いた。
だから、これはきっとアナタの気まぐれ。
今はそれでも良いの、今は。
「おん、ええで。」
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作者名：あるかろいど有機 | 作成日時：2024年3月9日 17時
