大人になるには (ページ8)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:341 hit

8. ページ8

電車は、海の近い駅に着いた。

『降りよう』と言うかのように、手が、ぎゅっと握られた。

言葉を交わした訳ではなかったのに、殆ど同時に、2人は、席を立っていた。

ホームに出ると、強い潮風が吹いていた。

私とすばるの結っていない、伸びた髪が、風に負けて、なびいた。

すばるはまた、何か急いでいる様子で、早足にホームを後にした。

ついた駅は、近くの工場の作業員らしき人達が、帰路に着くために混雑した様子だった。

人の流れに逆らって、人と人との間をすり抜けて、走っていった。

2人は、相変わらず手は繋がれたまま、どんどん海の方に向かって行った。

ついたのは、海の見える公園だった。

真っ黒な大阪湾、その奥に、工場やビル達がキラキラと、光っていた。
凄く、対照的だった。キレイだ。

「なんか今、凄い悪いことしてる気分やな。」

久しぶりに、すばるが発したのはそんな言葉だった。
相変わらず、手は繋がれたままで。
暗さのせいではっきりとではなかったが、少し口角を上げたように、見えた。

「そうだね」

軽い返事。
それでもまた、彼は少し、口角を上げる。