大人になるには (ページ5)

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季節は変わって、春がきた。

それでもまだ、橋の上を吹く風は冷たい。

河川敷の桜は丁度開花したぐらいで、春空が広がる。

「うわっ、、」

珍しく上を向いて歩いていると、橋を渡りきったところで、アスファルトのヒビにつまずいてかなり大きく転んだ。

このヒビも1月に起こった地震の影響だろうか。

この辺ではあまり被害は大きくなかったようだが、こういうこともあるので、要注意だ。

膝に痛みを覚え、見てみると、赤い血がでていた。かなりの大量出血である。

どうしようかと迷っていると、後ろからドタドタと大きな音が聞こえた。

「大丈夫かーー!?」

走ってきた男の子は私の前に止まってゼエゼエと息を吐いて、そういった。

「さっきコケたやろ!!怪我は?」

「はい、、、大丈夫です…。」

私がそういうと、彼はその大きな目でじろっと私を見つめた。

「そうかい…って大丈夫じゃないやろ!!血出てるやんけ!!バンソーコーあるやろか…」

彼はカバンの中をゴソゴソと漁って、「ほい」と、小さな絆創膏を二枚くれた。

「あの、ありがとうございます。」

「ええねんええねん、ほな!」

キラっと目立つ八重歯をみせ、笑いながら去って行った彼は、本当に嵐みたいな人だった。

何を考えたか、ふといつもの場所となった河川敷を見下ろした。

すばるとあの変な約束を交わしたのは、もう半年近くなるのだろうか。

隣町に住んでいるらしいが、日常で会うことはまず無い。

彼は本当に、変な約束を信じて、この春からもここに来るのだろうか。

元はと言えば赤の他人なんだから…。