拾われた先はキンプリハウス

『お手上げ』 ページ40

S:玄樹


僕にしがみついて、
右腕だけを出して、ガクガク震えて…



ここまでガクガク震えていたら
危なくて検査できない。



紫耀「(ふるふる)」



「(今日辞める？)」



紫耀「(こくん)」



「海人くん？今日は、辞めようね。
ちょっとだけ難しそうだから。」



海人「やる！やるっ…やって…やって」



僕にしがみついたまま、
差し出していた方の手をブンブン振る。



「海人くん？海人くん、今日は辞めよ？」



全然僕の話に耳を傾けず、
『やる』って主張してるから、
海人くんの背中をトントン叩いた。



海人「やめ…ないっ…」



「今日は難しいんだって。」



海人「やるっ、むずかしくないもん。やる…」



実は紫耀と
採血できたら退院って条件を伝えるか
伝えないか話していた。


『採血できたら退院』って
ポジティブに捉えられるかは
正直賭けに出た。


でも、まさかここまで
追い込んじゃうとは思わなかった。



こんな細い体をガクガク震わせて、
『やる』って言わせてしまうなんて…



「海人くん、今日はやめよ？」



海人「(ふるふる…)」



汗びっしょりだ。



海人くんは頑なに
僕にしがみついたまま腕を出したまま。



紫耀「(やろっか。)」



「(…うん)」



ここまでして、頑張ってるから、
早く終わらせてあげた方が負担もすくない。



あと意外に海人くん、頑固。笑



紫耀「わかった、やろうね。
退院して海人くん何やりたい？」



流石に僕らがお手上げ。



海人「…(ガクガクガクガク)」



紫耀は気を逸らしてくれようとしてるんだけど、
海人くんはそれどころじゃないみたい。



「海人くん、何しよっかね〜
久しぶりに折り紙する？」



海人「………(ガタガタガタ)」



頑張れ…海人くん。


紫耀「ごめんね、チクッ…はい、おしまい。
あとは、もう少し動かないでねー」



紫耀も上手いから痛みも少ない…


海人「っ！(ふるふるふる)」



首をブンブン横に振って、
頭をのけぞる。



「危ないよっ。かいとくん。大丈夫。もう終わるからね」



海人くんを自分の方に引き寄せて、
背中をトントン…



紫耀「ちょっと痛いよー」



針が抜かれると、
海人くんは、クタッと頭が後ろに落ちそうになる。



それに、僕の膝が冷たくなる。



失禁しちゃったのかな…？

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