拾われた先はキンプリハウス

『向き合う』 ページ23

S:廉


「海人…げんにぃが教えて欲しいんだって。」



海人「…廉くん、僕もう眠い」



「ねぇー、かいと。お話ししたくないの？」



海人「廉くんとこうやって話してるもん」



「話したくないなら僕から話すよ？」



『家族』っていうものになったんだから、
ちゃんと話さないといけないって僕は思ってる。



海人「………」



玄樹「難しいことは聞かないよ。
お母さんに、注射されたことが怖い？
それとも、もともと針とか苦手？」



「いいの？僕が答えちゃうよ？」



正直、僕もよくわかってない。


注射される時に、ものすごい抵抗と、
混乱していたことくらいしかわからない。



海人「…だめ。」



「じゃあ、自分の言葉言って？」



海人「………ままが…ぼくきらい…
する…なってから…、…にげても…
…ずっとこっち…くる。ぼく…こわいの」



玄樹「…そっか。
お母さんが海人くんのこと嫌いで、
注射するようになってから、逃げても海人くんの
方に向かってくるのが怖かったんだね。」



海人「………」



玄樹「打たれた後はどんな感じ？」



海人「……おもい」



玄樹「眠くなる感じ？」



海人「…ん、ちからぬける」



海人もちゃんと
向き合わなきゃいけないことわかってるよね。



玄樹「そっか、怖くなった時はどうしてたの？」



海人「………………」



ちょっと難しいかな。




「なきさけんでた…自分の手首たくさん噛んでた。
頭もガンガンうってたの。ぼくみてた」



海人「ぼくも…ど、したら…いい…かん、な…っ、…」



紫耀「海人くん、大丈夫だから、
ゆっくり深呼吸だよ。いっしょにやろっか。」



海人「っ、…わい…から、…げた…やっ…こわ、…」



「ごめんね、海人。
僕…助けたいのに…、海人のにぃなのに…ごめん…」



僕だって、助けられるなら助けたかった。


でも、たすけられない…


ここから出られないから。



この狭いところから出られないから。



僕は、大体
狭い箱に閉じ込められる。



押入れとか、冷蔵庫とか
お風呂の浴槽とかに…


海人の注射が終わるまで
僕はその狭いところから出られないから。

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