拾われた先はキンプリハウス

『悲しい現実』 ページ49

S:紫耀



「勇太？ご飯食べた？」



勇太「食べてないよ…母さんのご飯食べたいもん」



「母さんのご飯今ないからさ、
一緒に、ご飯食べよ。特別に
食堂でご飯食べようか。ね？」



勇太「…えぇ…母さんの食べたい。」



「勇くん、ここ病院だから
病院食か食堂のご飯どっちかしかないよ。」



勇太「えぇ…やだな…じゃあ、紫耀にぃ
一緒に食堂でご飯食べよ。」



「うん、そうしよっか。」



ちょっと不服そうだけど
納得してくれた…



…
…
…



勇太「やったぁー。退院っ♪」



退院をきっかけに、
思い出さないかなって思ってたけど
一人称は相変わらず『僕』のままだし、
『母さん』『父さん』とやたら出してくる。



勇太「母さんおうちで待ってるかな〜」



今回の症状は、
寂しさを父さんと母さんの記憶で
埋めようとして混乱してる見たい。



大丈夫かな。


今日俺と玄樹はこのまま上がって、
一緒に帰ることにした。



勇太「ただいまぁ〜。
あれ、母さんの靴ないよ？
お出かけ中？」



「勇くん、一旦手洗ってきて。」



勇太「はぁーい。おやつ何かな〜」



幼い…



伝えなきゃいけないよねって
話してて…



「勇太、ここおいで。」



勇太「んっ、なに？プリン？」



「勇太。大事なお話ね。」




勇太「うん…？」



「父さんと母さんのこと」



勇太「……やめて。聞かない。
父さんどこ？っ、んっ、かあさんっ！」



椅子からおりて、
走って家中を探し始めた。



玄樹「勇太！大丈夫だから。落ち着いて。」



勇太「離してっ…やだっ…やだよっ、やだっーー！」



玄樹「お願い…勇太落ち着いて？」


廉くんや海人くんみたいに
細くても力は全然勇太の方がある。



玄樹「勇太？大丈夫」



勇太「玄にぃ…いるんだよ…母さんもいる。
2階にいるの。呼んでくるから待ってて？」



まだ退院は早かったかな…



勇太「ほんとだよ…呼んでくるから…」


玄樹「じゃあ、一緒に探そっか…
僕も一緒に探してもいい？」



勇太「さがすんじゃないよ…呼びに行くの。いるから」



玄樹「わかった。言ってくるね…」


「わかった。ここで待ってるね。」



勇太「うん！すぐ来るからね」


嘘言ってるんじゃない。


それは勇太の目を見たらわかる。


でも、現実は悲しい…

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