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温もり85 ページ35

「おかしな……話だよね」


あれだけ嫌がったのに今じゃ淋しいとか。


「さよならしたくないよ……」


ぺたんと座り込んだ。

それからどのくらい経ったのだろう。

ここは時間がないのか、時間の感覚があまりない。

長く感じるかもしれないし短く感じるかもしれない。


「A」


目の前に足が見える。

顔を見上げるとオロチさんがいた。

オロチさんは私の前に座り、私の頬に触れた。


「……目が腫れてる」


「私、離れたくないよ……まだ皆と話してもないのに……」


そう言うとオロチさんは笑って私の手を強く握った。


「あの時も言ったが、私たちはいつでもAのそばにいる。ただ見えないだけだ。そんなに悲しむことじゃない。二度と見えない確証はないはずだ。きっとまた会える」


「でも、皆私のこと忘れちゃわない?どうでもよくなったりとか……」


オロチさんの視線は私の目を見ていると思ったが、どうやら私の後ろを見ているようだった。


「だいぶ怒ってるぞ」


「ご、ごめんなさい……」


オロチさんは立ち上がって私に手を差し出した。

私はその手を握って立ち上がった。

そこにいる私の友達。

手を伸ばしてもなにかに触れる感覚はない。


「あったかい……」


でも確かに感じた。

温もりを。


「えっと、こういう時なんていえばいいのかわからないけど……。ありがとう。七年前はきちんと言えなかったから、今回は、言うね。友達になってくれてありがとう……。約束守れなくてごめんなさい。嫌なこといっぱい言って嫌いとか言っても本当はそんなこと思ってなくて……っっ」


自然と涙が溢れてくる。

落ちた涙は空中に落ち、伝った。


「皆が助けてくれた時、本当に嬉しかった……っっ」


確かに彼らはここにいる。

この温もりがそう教えてくれる。


「次は……っっ!!いつか会えるかわからないけど……っっその時までどうか私のこと忘れないで……!!それで、私といっぱい話して貰えると嬉しい……っっ」


一瞬彼らの姿が見えた気がした。

とても穏やかな顔をしていたと思う。


「皆ありがとう……。大好きだよ、またね」


手をおろして目元をこすった。


「家まで送ろう。コートを着たほうがいい」


「うん……」

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ぐりーん(プロフ) - もうこれ何度見返しても涙…好きすぎる( ; ; ) (2022年1月16日 16時) (レス) id: c2e222939c (このIDを非表示/違反報告)
いちご - 感動しました、、、 (2020年4月16日 19時) (レス) id: be295054f5 (このIDを非表示/違反報告)
黒咲優乃 - これ絶対誰でも泣きますよ...感動&少し切ない...良い物語ですね。何年、もしかしたら、何十年か後、主人公がオロチ達とまた再開出来たら良いなぁと思いました (2018年12月25日 0時) (レス) id: c26dd69b91 (このIDを非表示/違反報告)
奈乃 - 泣いちゃいました! (2017年11月19日 12時) (レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - 感動してに泣きました。 (2017年6月5日 19時) (レス) id: 463cc6db15 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2016年3月3日 16時

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