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第十話 ページ10

あれから数週間が経った。

あの日、弟と接触したことに気づかれ弟の部屋には手伝い人が厳重に警備していた。

あれ以降彼らとは一度もあっていない。

もしかしたら見る力も、感じる力もなくしてしまったのかもしれない。

暑い部屋に涼しい風が入り込む。

梟が鳴き、夜を伝える。

獣の遠吠え。

熱はほとんどなくなったが咳が酷くなる。

刻一刻と死に近づいているのが分かった。

誰とも口を聞かず過ごし、死を待つ日々はとても退屈である。

いっそのこと早く死ねたら楽だろうにと思うようになってしまった。

生きている価値も見出せない。

何故私は死ねないのだろう。

布団の中で何度も何度も繰り返し思う。


「……だれ?」


外から人の足音がかすかに聞こえた。

私は音のする方へ手を地につかせ、ずるずると体を引きずりながらむかった。

このとき、私は小さな期待を抱いていた。

やっと誰かと喋れるかもしれない、と。

障子を勢いよくあけ、前へ進む。


「きゃっ」


縁側から転がり落ちた。


「どこにいるの…?ねぇ、私とお話してくれませんか…っっ」


痛いのなんて二の次だった。

誰かと話したい。

それだけが私の頭の中を支配していた。

頬に手の甲で擦られる感触がした。

すると体がふわりと浮く。


「あ…、ありがとう…」


私は縁側に座らせてもらった。

一言も発さないその方に興味をそそられた。

私は両手を伸ばしその方を探した。

だけど空気を掴むばかり。


「ここだ」


初めてきいた言葉。

男の子だった。

男の子は私の手を握り、自分の頬にあてた。

もちもちふわふわしていた。

髪は長く、さらさら。

とても素敵な方なのだろうと妄想が膨らむ。


「…あ、あの。私と友達になってくれませんか…っっ」


私は必死に頼んだ。


「…友達なんて頼んでなるようなものじゃないだろう」


「…ごめんなさい」


冷たく言われ私は大人しくなる。


「…別に怒っているわけではないから落ち込むな」


「…はい」


そんなこと言われても簡単に「そうですか」と言えるわけなかった。


「…私は友達を作るという言葉に違和感を覚える。無理して交友関係を構築しているに過ぎないからだ。ふと気づけば一緒にいる…それが友達だと思う」

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剣城京菜(プロフ) - ロキさん» あなたの温もりはの続編を企画中です!!できるだけ早く投稿するので待っていてくださると嬉しいです^_^ (2015年11月8日 13時) (レス) id: 3c3ce2d8b0 (このIDを非表示/違反報告)
ロキ - あなたの温もりはの続き書いてほしいです。 (2015年11月8日 8時) (レス) id: 27f7c75272 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - ナッツさん» 本当にご迷惑をおかけします……でも極力更新はしていくつもりなので最後までよろしくお願いします!! (2015年11月2日 23時) (レス) id: 3c3ce2d8b0 (このIDを非表示/違反報告)
ナッツ - 12/12まで更新がほぼてきないんですか・・・!?大変ですね!!気を長くして待ってます(^^*) (2015年11月2日 23時) (レス) id: 70b9dc3167 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - brownsugarさん» ありがとうございます!!これからもよりよい作品が書けるように日々努力します!! (2015年9月21日 22時) (レス) id: 587c793b66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2015年8月14日 14時

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