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第九話 ページ9

いつものように稽古をしていた。

最近、頭が熱くぼーっとしていた。

だけど私は大したことないと体にムチを打って稽古に出た。

そして視界が眩み、真っ暗な闇に覆われた。

目は開けているはずなのに見えなかった。

なにが起こったのか全く検討がつかなかった。


「なにしてるの、早く立ちなさい!!」


母様の怒鳴り声が耳に響いた。


「母様…っっ見えない…っっなんで…っっ助けて…っっ!!」


神様は私を見捨てた。

私はその後自分の部屋に運び込まれた。

どうやら私は自分も気づかないうちに相当な無理をしていたらしい。

本来立ち上がることすら困難な程の熱。

死ぬまで治ることのない病。

そして、失明と医師から診断された。

その日から私の生活はとても静かなものとなった。

たまに聞こえる母様の怒りの声さえ我慢すれば平穏だった。


「姉様…」


障子を開ける音とともに小さく可愛らしい声が聞こえた。

年の離れた、たった1人の弟。


「私に近づくと病気がうつるって母様に叱られるよ」


「母様は今出かけてるよ」


声がとても近い。


「姉様…僕は早く姉様と遊びたいです」


ほっぺに触れられる。

とても小さい。


「……ごめんね。姉様はもう遊べないよ」


その小さな手を優しく包み込んだ。


「父様の跡取りはきっとあなたになると思う…ごめんね、私なんかが姉様で…」


「姉様…、僕は姉様が大好きです…だから姉様が姉様でいてくれて嬉しい…」


私の手にぽたりと雫が落ちた。


「……母様が帰ってきたかな。ほら、早く…」


「うん…」


弟をなだめ、部屋から追い出した。

目に巻かれた布の隙間から雫が頬を伝い手の甲に落ちた。


「ごめんね」

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剣城京菜(プロフ) - ロキさん» あなたの温もりはの続編を企画中です!!できるだけ早く投稿するので待っていてくださると嬉しいです^_^ (2015年11月8日 13時) (レス) id: 3c3ce2d8b0 (このIDを非表示/違反報告)
ロキ - あなたの温もりはの続き書いてほしいです。 (2015年11月8日 8時) (レス) id: 27f7c75272 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - ナッツさん» 本当にご迷惑をおかけします……でも極力更新はしていくつもりなので最後までよろしくお願いします!! (2015年11月2日 23時) (レス) id: 3c3ce2d8b0 (このIDを非表示/違反報告)
ナッツ - 12/12まで更新がほぼてきないんですか・・・!?大変ですね!!気を長くして待ってます(^^*) (2015年11月2日 23時) (レス) id: 70b9dc3167 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - brownsugarさん» ありがとうございます!!これからもよりよい作品が書けるように日々努力します!! (2015年9月21日 22時) (レス) id: 587c793b66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2015年8月14日 14時

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