八十四 待つ者 ページ34
痛さの限界で弱々しく求めた温もり。
私が最も信用できる強いその手を。
「助けて……オロチさん……っっ」
目をぎゅっと瞑ったその時、突然私の体は真っ逆さまに落ちた。
はっと目を開けると私を掴んでいた足が千切れ、一緒に落下していった。
『──A』
遠くで私の名前を呼ぶ声がする。
「──A……っっ‼」
その声は段々と鮮明となっていく。
腕を掴まれ引き寄せられるとその腕は私の体を強く、だけど優しく抱きしめた。
そのまま桜の海に落っこちて、視界はピンク色に染まった。
すぐに腕を引っ張られ、体を起こされる。
「──……‼」
そこに居たのは紛れもなく私が最も愛した人。
特別の1番。
「オロチさん……‼」
その瞳はシンハライトのようで、少しだけ潤んでいた。
指先で撫でるように頬に触れ、幻でないことを確かめる。
この温もりは確かにオロチさんだった。
「遅くなってすまなかった……」
「ごめんなさいオロチさん……っ」
私は自分より小さな体を壊れる程強く抱きしめた。
大好きな手は私の頭を大事に大事に撫でた。
体を離すとオロチさんは私に微笑みかけて、無事で良かったと呟いた。
その後ろでこの世界のオロチさんが顔を暗くして立ち尽くしていたのが見えた。
「裏切れないなんて義務的なものじゃない。裏切りたくないんだよ。だって私は世界を信じた。生きることを信じた。自分を、晴愛さんを、桜を、信を、オロチさんを信じた。これからも誰かを信じる為に、私は一度信じた世界で幸せでいたいの……」
遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。
「ままーっ‼」
晴愛さんの両肩に担がれながら桜と信が泣きそうな顔でやってきた。
「A……っずっと待ってたんだよ……‼」
晴愛さんは怒った顔で私にそう言った。
「ごめんなさい……」
桜と信は晴愛さんの肩から私にしがみついた。
流石に二人分は抱き上げられずに私は尻もちをついた。
「桜、信、寂しい思いをさせてごめんね……」
「ままいっちゃいや‼」
桜と信はしがみついたまま、私の胸に顔を擦った。
「A、お願い。居なくなるなんて言わないで……」
晴愛さんは鼻をすすりながら後ろから腕を回した。
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剣城京菜(プロフ) - れいちゃそさん» ありがとうございます……！リアルが忙しく中々更新できませんが、完結までは投稿しますのでよろしくお願いします……！！ (2020年8月8日 23時) (
レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
れいちゃそ(プロフ) - コメント失礼致します。つい最近こちらの作品を見つけて、シリーズの初めから読ませて頂きました！更新楽しみにしてます。 (2020年6月29日 2時) (レス) id: f8d9f5b45d (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - いえいえ~ (2020年5月10日 20時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - そうなんですね！教えて下さってありがとうございます！ (2020年5月10日 19時) (レス) id: 9574458ee9 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - なつさん» あらかじめ溜めてます。この作品は既に完結まで書いてます。ただサブタイトルは後回しで難航しがちですが……（汗） (2020年5月10日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：剣城京菜 | 作成日時：2019年12月21日 18時
