八十二 理由 ページ32
「……？」
目を覚ますと外側の窓に何か
車は止まっているし妙に静かだった。
ドアを開けるとその隙間から大量のピンクの光の粒が舞い込んできた。
「……桜の花びら」
外に目を向けると、そこには桜の世界があった。
だけど私が知っているものとは少し違うような気配もする。
「ねぇ、オロチさん……オロチさんってば……」
オロチさんの肩を強く揺らしていると眉がピクリと動いた。
重そうにまぶたを動かし、視線が交わるとオロチさんは辺りを見回した。
「……ここはどこだ」
「気づいたらここに居たの。お父さんもお母さんも全然起きないし……。目的地に着いたわけでもないみたい」
外に出ても桜の世界そっくりで、どこを見回しても桜しかない。
オロチさんはあとから外に出ると敵の気配はないと言った。
「……でも、また何かに巻き込まれたのは確かだよ」
何かないか近くまで様子を見に行こうと歩き出した。
桜の花びらが足に引っかかり歩きづらい。
オロチさんは桜の木に飛び乗ると先の木にと飛び移った。
すぐに姿が見えなくなり、私は先を歩こうと必死に足を動かした。
やがて少し開けた場所に辿り着いた。
「──……ここは」
目の前にある大きな大木は少しコケのようなものが生え、どこにある木よりも大きく立派だった。
上を見上げるとオロチさんが太い木の枝に立ち、こちらを見下ろしていた。
びゅうっと風が吹き、桜吹雪が舞った。
思わず目を瞑ると風はぴたりと止まった。
目を開けるとひらひらと舞い落ちる桜の中にオロチさんの姿があった。
「──あの時と同じ」
あの時もこんな感じだった。
オロチさんは瞳に影を宿し、私を薄目で見上げた。
きゅっと胸を押さえ、寂しさを堪える。
「私、なんとなく分かったような気がする。どうしてここにいるのか……」
私は幸せの中でずっと憧れていた。
ずっと拭いきれなかった。
誰かを信用できること。
心のそこから笑っていられること。
特別な誰かがいること。
家族に愛されていることを。
「なんとなく、変だと思ってた。帰りたいと意志が向く度、敵は現れた。私が手放したくないことは私の隣に居て無いことになることはなかった。だから、思ったの。ここは過去の世界なんかじゃない。ここは……私が憧れていた世界。私の未練の世界なんじゃないかって──……」
『──A』
柔らかな声が遠くの方で聞こえた。
振り向いても景色は変わらない。
だけど、何かが変わり始めている。
「何度も揺らいでしまったけど、私は……」
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剣城京菜(プロフ) - れいちゃそさん» ありがとうございます……！リアルが忙しく中々更新できませんが、完結までは投稿しますのでよろしくお願いします……！！ (2020年8月8日 23時) (
レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
れいちゃそ(プロフ) - コメント失礼致します。つい最近こちらの作品を見つけて、シリーズの初めから読ませて頂きました！更新楽しみにしてます。 (2020年6月29日 2時) (レス) id: f8d9f5b45d (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - いえいえ~ (2020年5月10日 20時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - そうなんですね！教えて下さってありがとうございます！ (2020年5月10日 19時) (レス) id: 9574458ee9 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - なつさん» あらかじめ溜めてます。この作品は既に完結まで書いてます。ただサブタイトルは後回しで難航しがちですが……（汗） (2020年5月10日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：剣城京菜 | 作成日時：2019年12月21日 18時
