五十四 微睡みの中へ ページ4
柔らかい光の中、赤ん坊の泣き声が聞こえた。
「ほら、大丈夫だよ。ままはここにいるよ」
目を開けると私は赤ん坊を抱いていた。
私にそっくりの女の子と男の子。
段々と泣いた顔から和らぎ、笑顔をみせた。
その笑顔を見たらぽかぽかして涙が溢れた。
「──A」
背後から手が伸び、私の頬に手を添えるとそのまま手を引いた。
上を見上げると男の子が私に優しく笑いかけた。
男の子はそっと唇をつけると後ろから優しく私を抱きしめた。
その笑顔も、名前を呼ぶ声も、匂いも優しさもオロチさんにそっくりだった。
「──オロチ、さん」
すると男の子は耳元で
「その名を聞くのは久しぶりだ。……まさかまだ慣れていないのか?」
と言った。
「なんだか……夢を見ているみたい」
男の子はソファを回り込んで私の隣に座ると赤ん坊を1人、抱き上げた。
赤ん坊はぎゅうっと嬉しそうにしがみついた。
「夢などではない。桜も信も、私も全て本物だ。捨ててしまったものもあるが、私はAと共になれたことを嬉しく思う。後悔など微塵もない」
男の子は赤ん坊の頬に唇をあててリップ音をたてた。
「特別な力が無くとも誰かを守ることはできる。幸せを感じることもできる。私はAと桜と信がいればそれで充分だ。死ぬまで私はAたちと共に居ることを、守ることを誓おう──……」
暖かい手に引かれ、寄り添うと太陽のような温もりを感じた。
その温もりで私は微睡みの中へ溶けていく。
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剣城京菜(プロフ) - れいちゃそさん» ありがとうございます……!リアルが忙しく中々更新できませんが、完結までは投稿しますのでよろしくお願いします……!! (2020年8月8日 23時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
れいちゃそ(プロフ) - コメント失礼致します。つい最近こちらの作品を見つけて、シリーズの初めから読ませて頂きました!更新楽しみにしてます。 (2020年6月29日 2時) (レス) id: f8d9f5b45d (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - いえいえ~ (2020年5月10日 20時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - そうなんですね!教えて下さってありがとうございます! (2020年5月10日 19時) (レス) id: 9574458ee9 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - なつさん» あらかじめ溜めてます。この作品は既に完結まで書いてます。ただサブタイトルは後回しで難航しがちですが……(汗) (2020年5月10日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年12月21日 18時