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七十七 滑稽 ページ27

そう言ってAは幼い子どものように寝息をたて始めた。

私はそっと近づき毛布をかけ、顔にかかった髪を避けた。


「──……」


妙にふわふわとした、でもちくちくとした気分に胸をあて、深く呼吸をした。

だがそれでおさまることはなかった。

思えば出会った日、既に私はこんな気分を体験していた。

Aの言う真実に優越感を覚え、この世界にいることを否定される度にふわふわとした気分は棘になった。


「……」


汗ばんだ頬を手の甲で恐る恐る撫で、私は自身の真実をその寝顔に答えを見出した。


『私、どうしてここにいるかなんとなく分かったような気がする……』


「──随分勝手なものだ。A、……A」



どうしてこんな簡単な言葉を使うことができないのだろうな。

ふと顔をあげて目に止まるのは怪しく光る液体が入った小瓶。

手を伸ばしそれを乱雑に掴み透かし見た。

"人になる覚悟"

それはどちらに向けての言葉か。


「……オロチさん」


寝言で名前を呟かれ、満たされた感覚と複雑な感情が同時に表れた。

触れかけた指先を引っ込め、私は顔をそむけた。

……今の私は相当滑稽なのだろうな。

私は小瓶をそっと懐に忍ばせ、背を向けふて寝をした。

七十八 夕方→←七十六 ここにいる理由



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剣城京菜(プロフ) - れいちゃそさん» ありがとうございます……!リアルが忙しく中々更新できませんが、完結までは投稿しますのでよろしくお願いします……!! (2020年8月8日 23時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
れいちゃそ(プロフ) - コメント失礼致します。つい最近こちらの作品を見つけて、シリーズの初めから読ませて頂きました!更新楽しみにしてます。 (2020年6月29日 2時) (レス) id: f8d9f5b45d (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - いえいえ~ (2020年5月10日 20時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - そうなんですね!教えて下さってありがとうございます! (2020年5月10日 19時) (レス) id: 9574458ee9 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - なつさん» あらかじめ溜めてます。この作品は既に完結まで書いてます。ただサブタイトルは後回しで難航しがちですが……(汗) (2020年5月10日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年12月21日 18時

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