九 金色の瞳 ページ9
「……目の前で見捨てて死なれたら夢見が悪くなる。ただそれだけだ」
あまり関わるなと言うとオロチさんはどこかへ行ってしまった。
心を許さない相手にはあのくらいの対応だったな、と思い出した。
「さっむ……」
真っ暗な中、かばんを手に取り立ち上がろうとしたら右足に上手く力が入らなかった。
「……怪我した」
落ちた時、割れた木片で右足を思い切り切ってしまっていたようだ。
そこそこ深く刺したようで、生温かい液体が足を伝った。
怒られるのを覚悟で親に電話をしようかと思ったが、水没したせいで電源が入らなかった。
更に怒られるなと思いながら私は足を引きずりながらおおもり山を降りた。
街灯の下で立ち止まり足を確認すると、予想通り血の跡がしっかりとついていた。
「……痛い」
そう言えばオロチさんはいつもその痛みをなんとしてでも取り除いてくれた。
体の痛みなら労り、心の痛みならば肌の温もり。
長いため息をつくと私の頭に白い布がぱさりと被さった。
はっと顔をあげると白い布の隙間から見慣れた手が見えた。
「オロチ……さん……」
白い布を引っ張るとそれはふわふわのタオルだった。
「……やはり怪我をしていたのか」
オロチさんは私の右足をじっと見た。
「わざわざ戻ってきてくれたの」
その問いにただの気まぐれだと答えた。
「──貴様の言うことは何も信用はしないが。さっき私のことを……夫、と言っていたな」
オロチさんはタオルをひったくると私の髪をぐちゃぐちゃと乱雑に拭いた。
「痛い……」
そう言うとオロチさんはさっと手を引っ込めた。
私はタオルを被ったまま、髪をほどいた。
「私からすると今いる時間は過去。だけど少し異なった点もあるみたい。オロチさんは私の特別な人なの。……早く帰りたい。私の特別なオロチさんはとっても優しいよ」
「私は……貴様のことなど知らない」
1歩、草履が擦る音がした。
「でも私はオロチさんのこと知ってる。優しさに不器用なところ、変わっていなくて良かった……」
ぱっと顔をあげるとシンハライトのような金色の瞳が大きく見開いた。
「……そんな顔をしても信用はならない。今日のところは家まで送り届けてやるがもう関わるな」
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剣城京菜(プロフ) - なつさん» あっ、本当ですね…。直しました、教えてくださってありがとうございますっ! (2019年12月4日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 三十三なんですが、(名前)が(あ名前)になってます、、、 (2019年12月4日 16時) (レス) id: ebf4a6617f (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - 剣城京菜さん» お返事ありがとうございます…! 剣城京菜さんの作品妖怪ウォッチのとイナイレの両方好きでした!また新作がでるんですね!楽しみに待ってます! (2019年11月12日 0時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 恋兎姫さん» ありがとうございます!!既に完結までかいて投稿するだけなので、少ししたら平行して新作を出していこうと思っています。良ければそちらも読んでいただけたら嬉しいです!! (2019年11月10日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - この小説のシリーズ大好きです! もうすぐおわっちゃうんですね…凄く悲しいけど作者様のペースで頑張って完結させて下さい!応援しています! (2019年11月8日 22時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年10月20日 11時