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八 信じない目 ページ8

今からおおもり山に行くのは危険だということはわかってはいたが、気づくとおおもり山の麓まで来ていた。

薄暗くなった道をのぼっていると神社が見えてきた。

私は目を閉じ、意識を集中させた。

だけど今の私は人間と同然で、妖怪の気配も分かるわけがない。

それでも、気配は分からなくとも視線はなんとなく分かる。

誰かがこちらを見ている。

その方向を振り向くと逃げるように視線はなくなった。

木の間を飛び乗って逃げていく音が奥の道へ消えていった。

明らかに相手は私を認識した上で逃げている。

もしかしてオロチさんなのではないかと思い、急いで後を追いかけた。

どんどん奥へ進んで行くと川のある場所へ出た。

川沿いを沿って歩いていると山神滝の橋の真ん中で背を向け立っている後ろ姿が見えた。

その後ろ姿は間違いなくオロチさんだった。


「オロチさん……」


橋へ足を踏み入れようとするとオロチさんは


「何者だ」


と言って私に初対面に向ける不信な目を向けた。

その目は私と昔初めて会ったときのような、何も信じていない目だ。


「人には生まれつき妖怪が見える者がいる。だが、何故貴様は私を嗅ぎ回る」


「それは……オロチさんが私を助けてくれる、から……」


オロチさんは目を細める。

その目は好きじゃない。


「私、この世界とは別の世界から来たの。元の世界に戻りたくて方法を探しているんだけど……」


「それと私と何と結びつく」


「オロチさんは……私の1番の特別な人、だから」


オロチさんは更に目を細める。


「もうじき足元が見えなくなる。その前に帰れ」


「う、嘘じゃないよ……‼」


足を踏み出そうとするとオロチさんはこの橋は脆くなっており、私が乗れば壊れると言った。


「貴様のような者がどうなろうと私には関係ない。さっさと私の前から立ち去れ」


「私のオロチさんは……私の夫です……‼だから関係ないことない‼絶対助けてくれるってこと、私知ってるよっっ」


私は強く足を1歩、前へ踏み出した。

体重を乗せた足元がバキッと音をたて、1枚板が割れた。

退くこともできず、私はすとんとその間から落っこちた。

川の中に体が沈んでいき、見上げた水面に人影が揺らぐ。

必死に手を伸ばすと私の体は川底からあげられ、川岸に放り投げられた。


「う……っ」


水を吐き出し顔を手で拭う。


「……だから言っただろう」


私と同じくずぶ濡れのオロチさんがうんざりしたような顔をして私の体を突き放し、立ち上がった。


「……ほら、助けてくれた」

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剣城京菜(プロフ) - なつさん» あっ、本当ですね…。直しました、教えてくださってありがとうございますっ! (2019年12月4日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 三十三なんですが、(名前)が(あ名前)になってます、、、 (2019年12月4日 16時) (レス) id: ebf4a6617f (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - 剣城京菜さん» お返事ありがとうございます…! 剣城京菜さんの作品妖怪ウォッチのとイナイレの両方好きでした!また新作がでるんですね!楽しみに待ってます! (2019年11月12日 0時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 恋兎姫さん» ありがとうございます!!既に完結までかいて投稿するだけなので、少ししたら平行して新作を出していこうと思っています。良ければそちらも読んでいただけたら嬉しいです!! (2019年11月10日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - この小説のシリーズ大好きです! もうすぐおわっちゃうんですね…凄く悲しいけど作者様のペースで頑張って完結させて下さい!応援しています! (2019年11月8日 22時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年10月20日 11時

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