四十二 甘えの横取り ページ42
列からはみ出た私は元居た位置に戻る勇気はなく、最後尾に並ぼうと体をそむけた。
「あっ、待てよ。あと俺しか居ないし先行けよ」
……くんは私の腕を掴んで無理矢理受付前へ差し出した。
図書委員はさっと私から本を受け取ると返却の手続きをした。
「……ごめんね」
振り向き見上げると……くんは元から並んでいたのに変な奴だなと顔を背けた。
返却の本を受け取り奥の棚へ向かい、誰も居ないことを確認してオロチさんに何かあったのか尋ねた。
だけどオロチさんはむすっとした顔のまま何も答えなかった。
「……ねぇ、オロチさん。そこの本棚に入れて欲しいんだけど……」
私は1番上の棚を指さした。
その棚は私の背ではぎりぎり届かなかった。
「……そこに踏み台があるだろう」
オロチさんは私の後ろに視線を向けた。
「オロチさんが入れたほうが早いもん。……お願い」
オロチさんは本と私の顔を見比べ、小さなため息を漏らすと片手で本を掴んだ。
「ありがとオロチさ……」
手を離そうとしたら突然背後から手が伸び、本を掴み上げた。
「あっ、……くん」
見上げるとまた……くんがそこにいた。
「続き借りる?」
「えっ、うん……」
……くんは次の巻2冊を引き抜くと私に渡した。
「あ、ありがとう……」
オロチさんは……くんをよく思っていないのだろうか。
睨みつけて頭を押さえると勉強スペース横の開いた窓から足を投げ出して座った。
「……そういえば部活はいいの」
「えっ、あー。返却期限とっくに過ぎてて先生に怒られたんだよ。すぐ返してこいって。それと今日これから大雨みたいで体育館に移動」
……くんは自分の本を棚に戻すと私が読んでいた本の1巻を手にとった。
「これ、面白い?」
「……そこそこかな」
……くんは自分も読んでみると言って1巻と2巻を手にして受付を済ませようと言った。
流されるまま受付を済ませると……くんは部活を見に来ないかと誘ってきた。
「……まだ図書館に用事あるから。外雨振るって言ってたから屋上前の扉にいるね」
「……分かった。じゃあな」
……くんは駆け足に廊下を駆け抜けた。
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剣城京菜(プロフ) - なつさん» あっ、本当ですね…。直しました、教えてくださってありがとうございますっ! (2019年12月4日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 三十三なんですが、(名前)が(あ名前)になってます、、、 (2019年12月4日 16時) (レス) id: ebf4a6617f (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - 剣城京菜さん» お返事ありがとうございます…! 剣城京菜さんの作品妖怪ウォッチのとイナイレの両方好きでした!また新作がでるんですね!楽しみに待ってます! (2019年11月12日 0時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 恋兎姫さん» ありがとうございます!!既に完結までかいて投稿するだけなので、少ししたら平行して新作を出していこうと思っています。良ければそちらも読んでいただけたら嬉しいです!! (2019年11月10日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - この小説のシリーズ大好きです! もうすぐおわっちゃうんですね…凄く悲しいけど作者様のペースで頑張って完結させて下さい!応援しています! (2019年11月8日 22時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年10月20日 11時