三十一 付き合い方 ページ31
『ねぇ、桜風さん。昨日のドラマ観た?』
『──うん、観たよ』
なんとなく混ぜられた会話でも私は同調してその空気に飲み込まれた。
楽しいという雰囲気も私は馴染めず、ぽっかりと心に穴を開けた。
嘘。
嘘、嘘。
観たなんて嘘。
母が見ていたのを横目でたまに観ていただけ。
内容なんてからっきし覚えていない。
何故私を混ぜた?
いつかまた離れてしまう?
怖い。
怖いよ。
傷つきたくないから下手なことは言えないできない思えない。
だけど私から隔てて傷つかれるのも嫌。
だって凄く痛いもの。
悲しいもの。
ちょっとしたことでも痛く苦しいのは知っているんだ。
だからせめて、誰にも悟られず隔てよう。
そうすれば誰も傷つかないから。
……上辺だけでいいよ。
きっと、大丈夫。
痛くなんかないよ。
『……なぁ、朝ポストの中を見ただろ?手紙、読んでないのか?』
『……くん。なんのことかわかんないや。ごめんね、私早く帰らなきゃ。……くん朝練あるでしょ、早くしないと遅れるよ』
傷つかないように、傷つかれないように私は正しい言葉を選びぬき並べた。
『……じゃあこれなんだよ』
……くんは私のスクールバッグの外ポケットに手を突っ込んで小さな白い封筒を取り出した。
『……開けたあとがある。本当は読んだんだろ?俺は、小さい頃からずっとお前だけを見てきたんだよ。明らかに嘘ついてるの分かんだよ……。そうなったのも小5のあの事のせいだってことも、全部……』
『……だから、何?……くんは気にしすぎだよ。私は元からこうだったもん。ただ気づかなかっただけだよ。こんなこと……くんが気にすることじゃないよ』
……くんは下唇を噛むと両肩を強く掴んだ。
『……あの時、俺がお前を好きだって噂が流れていたの知ってただろ?お前に関しての噂は嘘が多かったけど……あれは、本当だ……っっ。俺は、俺のせいでお前が一人になったことを知って怖くなって逃げたんだよ。だけど、ずっとお前のことを好きなことは変わらなかった……。遅くなったけど、今からでもお前を元に戻してあげたいんだ。もう、逃げたりなんかしない。一人になんてしないから、俺の彼女になってくれないか……?』
真剣な眼差しが訴えかける。
迷いがぐるぐると回る。
『──……分かんないよ、そんなの』
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剣城京菜(プロフ) - なつさん» あっ、本当ですね…。直しました、教えてくださってありがとうございますっ! (2019年12月4日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 三十三なんですが、(名前)が(あ名前)になってます、、、 (2019年12月4日 16時) (レス) id: ebf4a6617f (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - 剣城京菜さん» お返事ありがとうございます…! 剣城京菜さんの作品妖怪ウォッチのとイナイレの両方好きでした!また新作がでるんですね!楽しみに待ってます! (2019年11月12日 0時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 恋兎姫さん» ありがとうございます!!既に完結までかいて投稿するだけなので、少ししたら平行して新作を出していこうと思っています。良ければそちらも読んでいただけたら嬉しいです!! (2019年11月10日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - この小説のシリーズ大好きです! もうすぐおわっちゃうんですね…凄く悲しいけど作者様のペースで頑張って完結させて下さい!応援しています! (2019年11月8日 22時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年10月20日 11時