三十 暗闇の始まり ページ30
聞き覚えのある声が暗闇の先に現れた小さな光から聞こえた。
声はオロチさんにも聞こえていたらしい。
だけど更なる暗闇は後ろから差し迫っている。
進む以外の選択肢はないようだ。
オロチさんに引っ張られるまま、私は小さな光へと走った。
小さな光はやがて大きくなり、暗闇は私たちを吐き出した。
『A、私が抱いたこの感情は今まで生きた中で最も特別なものだ。一生忘れない、その為にどうか私と約束をしてくれないか』
「これは──……」
目の前に広がったのは甘い香りのたちこめる場所。
私とオロチさんの約束の世界。
「何故、私がここに……。あの子どもは……?」
オロチさんは現状が掴めない様子で、辺りを見回した。
『約束……?』
『次会う時まで、私を忘れないで欲しい。もし危機に陥った時は今度は私がAを守ろう』
A。
その名を口にするとオロチさんは私の腕を掴んでいた手をするりと落とした。
世界が点滅し、暗転した。
そしてゆっくりと再び世界を再生させる。
『ねぇ、……ちゃん。昨日のテレビ観た?』
『観たよー面白かったよねぇ、……?どうしたの?』
『……ちゃんあっち行こうよ』
『え、でも私Aちゃんとお話してて……』
再び再生した世界は私の暗闇の始まり。
『──……』
私の周りを飛び交う真実でない噂とそれと同化した噂。
1人にした噂。
独りになった瞬間。
誰一人私の側に残らなかった。
私はただ私を信じて欲しかっただけなのに。
たったそれだけで充分だったはずなのに。
『……こんなの、何も信じられないよ』
小さな私がそう呟いた。
「──……っっ」
左肩がずきん、と痛んだ。
もう傷跡もなくなったはずなのに。
世界は点滅し、次の世界へ変える。
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剣城京菜(プロフ) - なつさん» あっ、本当ですね…。直しました、教えてくださってありがとうございますっ! (2019年12月4日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 三十三なんですが、(名前)が(あ名前)になってます、、、 (2019年12月4日 16時) (レス) id: ebf4a6617f (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - 剣城京菜さん» お返事ありがとうございます…! 剣城京菜さんの作品妖怪ウォッチのとイナイレの両方好きでした!また新作がでるんですね!楽しみに待ってます! (2019年11月12日 0時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 恋兎姫さん» ありがとうございます!!既に完結までかいて投稿するだけなので、少ししたら平行して新作を出していこうと思っています。良ければそちらも読んでいただけたら嬉しいです!! (2019年11月10日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - この小説のシリーズ大好きです! もうすぐおわっちゃうんですね…凄く悲しいけど作者様のペースで頑張って完結させて下さい!応援しています! (2019年11月8日 22時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年10月20日 11時