二十八 心当たり ページ28
40分程して外に出るとオロチさんは私のあとを黙ってついてきた。
「……心当たりがあったなら真っ先にそちらへ行けば良かっただろう。他ごとにかまけるな」
「心当たりって言うのは最初からあった訳じゃない。……それに寂しさは放っておけないよ」
振り向くとオロチさんは一瞬だけ目を見開いた。
「だって一人は苦しいから。……寂しさは私が黒魔になる糧でもあったから、私はそういう気持ちを埋めてあげたいの。心当たりは噂程度に聞いたくらいだから本当かは分からないんだけど……商店街の隠れたところにあるらしいから」
目的地へ行こうと踵を返すとふいに片腕を掴まれた。
同じシンハライトの瞳は不審な視線を私の瞳へ直接送る。
だけど不審でもそれは私自身宛ではなかった。
はったとしたように手を離すとオロチさんは私から1歩引いた。
微妙な距離を保ったまま商店街へ辿り着いた。
「……その心当たりと言うのは一体どこにある」
「分からない……。とその筋に詳しい妖怪がいて、普段目に見えるものではないと聞いたくらいで」
妙に人通りのない商店街を歩いていると、不穏な風が正面から吹き込んだ。
『現実ハ己ノ願イ
自ラ導カレ還ロウトヨウトスル者ハ
自身ノ欲ニ気ヅカヌ
ソレデモ帰リタイト願ウナラバ
前ヘ進ムガイイ』
まとわりつくような声は風の折り返りとともに道の先を示した。
導かれるがまま歩くと視界が暗転した。
「……止まれ」
「いたっっ‼」
後ろからオロチさんが止めたにも関わらず、すぐに止まれなかった私は見えない壁に激突した。
脇からオロチさんが手を伸ばし正面の壁に触れた。
かちゃっと音がして縦筋の光が漏れた。
激突したのはどうやら扉だったようだ。
扉を押すとそこには1人の若い女の人が立っていた。
黒の透けた衣装は裾がきらきらと光り、覗く目は全てを見透かしているような感覚を覚えた。
占い師のような風貌をした女の人は奥のカーテン裏へ入っていった。
オロチさんに背中を押され中へ入ると左肩がずきずきと傷んだ。
あまり長いはしたくない。
「──あの、お尋ねしたいことがありまして」
カーテン越しに尋ねるとその中から女の人が顔を出し、赤く塗られた人差し指で私の顎を引き上げた。
「あなた、見た目の割に随分と屈強な人生を歩んでいるのねぇ」
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剣城京菜(プロフ) - なつさん» あっ、本当ですね…。直しました、教えてくださってありがとうございますっ! (2019年12月4日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 三十三なんですが、(名前)が(あ名前)になってます、、、 (2019年12月4日 16時) (レス) id: ebf4a6617f (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - 剣城京菜さん» お返事ありがとうございます…! 剣城京菜さんの作品妖怪ウォッチのとイナイレの両方好きでした!また新作がでるんですね!楽しみに待ってます! (2019年11月12日 0時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 恋兎姫さん» ありがとうございます!!既に完結までかいて投稿するだけなので、少ししたら平行して新作を出していこうと思っています。良ければそちらも読んでいただけたら嬉しいです!! (2019年11月10日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
恋兎姫 - この小説のシリーズ大好きです! もうすぐおわっちゃうんですね…凄く悲しいけど作者様のペースで頑張って完結させて下さい!応援しています! (2019年11月8日 22時) (レス) id: 2d1633e5ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年10月20日 11時