十四 中学生男子 ページ14
「もうそんな年になるにゃんね」
「……早いものですね。人間界には何か異常はありませんか?」
ジバニャンさんは少し間を起き、とある方角を指さした。
「実はなんだか今年は桜の咲きが悪いにゃん。こんにゃにぽかぽかしている日が続いているのに全然咲かないのにゃん」
また何か異変が起こっているのか、ジバニャンさんは心配している様子だった。
桜のことならば私がどうにかするしかないので、この街の桜の咲く場所へ行ってみることにした。
ジバニャンさんと別れてすぐ私はオロチさんの左手を握った。
手を抜こうと抵抗するのを押さえ込んで無理矢理指を絡める。
「……まだ駄目だ」
顔をしかめるオロチさんは背後をちらりと見た。
まだその先にはジバニャンさんの後ろ姿が見えていた。
「……オロチさん中学生男子みたい」
べっと舌を出すとオロチさんは不満そうにし、私の手を引いてさっさと歩いた。
公園に着いてそこに立っている大きな桜の木を見上げた。
花はついてはいるが10数個だけでこの暖かい気候にしてはとても少ない。
「A、自身の力に何か不調はないのか」
「……桜が咲くのと私の力は直接的関係はないよ。本来桜は植物だから……妖魔界の桜は私の力で年中咲かせているけど、人間界の桜は自らの力で咲いてるの」
私は桜の木の幹を撫で、その中にある桜の僅かな鼓動を感じ取った。
触れた手のひらから熱を送り出す。
すると空からひらひらと花びらが舞い落ち、私の手のひらにおさまった。
ふっと息を吹きかけ、花びらがぴたりと木の幹にくっつくとその瞬間、風とともに流れた桜の花びらが木に房をいくつもつけていった。
「……少しだけ元気なかったみたい」
上を見上げ、私たちはふっと息を吐いた。
それから私たちはさくらニュータウン中を歩き回った。
途中、1時間程休憩をして夕方頃になり帰ろうとおおもり山へ向かった。
ふと足を止めるとオロチさんはこちらを振り返った。
「……少し寂しい」
そう呟くとオロチさんは私の腕を少し引いた。
「今どこにいるのかな。……元気なのかな」
「──会いたいか」
オロチさんは不安そうな顔で私を見上げる。
会いたくないと言えば嘘になる。
だけど会ってしまったらきっと辛さが増してしまうだろう。
オロチさんは私の胸の内を悟ったのか、
「きっと元気でいる」
と言った。
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剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!完結編を投稿したので、よろしくお願いします!! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 番外編もすごく素敵でした!!続編楽しみにしてます。頑張ってください! (2019年10月14日 23時) (レス) id: f5a4951e98 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - れるれる(現.本垢)さん» 初めまして!!そう言っていただけてとても嬉しいです!!新作も今書いているので、次回作も読んでくださると嬉しいです!! (2019年9月25日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
れるれる(現.本垢)(プロフ) - 初めまして。この作品、すごく好きです。妖ウォを卒業しても剣城さんの作品だけはずっと見てるんです(笑)これからも更新頑張って下さい。 (2019年9月24日 21時) (レス) id: bb493c8f2f (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - なつさん» 期間が空いてしまったので勘違いさせてしまいました……!!ゆっくりでも完結までは投稿するので安心してください!! (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年9月23日 0時