さくらの営み ─誓い─【オロチ】 (ページ41)

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四十一特別な色ページ41

「……A、私の話を聞いてほしい」

オロチさんは私の前にしゃがむと顔を覗き込んだ。

「Aには辛い思いをさせてしまった……。また同じことを繰り返してしまい本当にすまなかった。私は1ヶ月前から土蜘蛛殿の屋敷に通っていた。それはAとの約束を果たす為だった。だが私が約束を破り子育てを疎かにしてしまった故、Aには迷惑をかけてしまった……」

オロチさんは優しく私の手を引っ張った。

「……どうか今から私と一緒に来てほしい」

そう言ってオロチさんは私の手を取ったまま、ゆっくり歩き出した。

もう空は暗くなり、月明かりが夜道を照らした。

たどり着いた先は土蜘蛛さんの屋敷だった。

少しだけ待ってほしいとオロチさんは桜と信と私を門前に置いて中へ入っていってしまった。

オロチさんが戻って来るとなにか屋敷内の灯りがあちこちつきはじめた。

「私はAと桜と信を心から愛している。満足する程上手く両立なんてできはしないが想いはいつだって同じものだ。それは今もこの先もずっとだ」

オロチさんは私の髪を耳にかけ、そっと指先でなぞる。

そして私の手を取ると薬指に何かをはめた。

オロチさんの手が離れると、月明かりで金色の小さな宝石がついたシルバーのリングがキラキラと輝いた。

金色の小さな宝石はまるでオロチさんの瞳のよう。

「あ〜っ」

信は私を見上げ、頬を拭う。

「今日、人間界に行っていたのはこれを買う為だった。私一人では良いものを選べないかと思って詳しい奴に着いてきてもらっただけだ。決してA以外に心を揺るがれはしない。でなければわざわざ1ヶ月前から準備なんてしない」

オロチさんは懐からもう一つ、ピンク色の小さな宝石がついたリングを取り出した。

それを私に渡すと手を差し出した。

私は震えた手でオロチさんの薬指にリングをはめた。

「この色は私の特別な色だ。Aは私が幸せにしたい。だから……」

静かな空気の中に、きらりと光る。

胸がいっぱいで溢れそうだった。

「私の妻になって欲しい──……」