さくらの営み ─誓い─【オロチ】

四十 ずっと ページ40

「まぁま‼」


声は段々と近くなってくる。

変に思い顔を上げ後ろを振り向く。

そこにはオロチさんが立っていた。

両腕には桜と信が抱かれていた。


「まぁま‼まぁま‼」


信は確かに口をそう動かしていた。

この声の主は……信だ。

泣きながら必死に"ママ"と呼んでいる。

暴れて無理矢理オロチさんの腕から退くと地べたをハイハイでこちらへやってきた。

3分の2程やって来たところで信は止まり、もぞもぞと足を動かした。


「ま、ぁくん……」


両手を地べたにつき、お尻を上げる。

少し震えた膝でそっと上半身を起こす。


「まぁま……」


泣いて震えながらもその足を少しずつ前へ踏み出す。


「まぁくん……まぁくん……っっ」


私はその場を動かず、まぁくんに両手を広げた。

じっと耐え続け、信は私の膝の上に倒れ込んだ。


「まぁくん……っっ‼」


私は信の体を強く、強く抱きしめた。

小さくて、柔らかくて温かかった。

ふわっと甘い香りが漂う。

淡いピンクの光は私の影を溶かしていく。


「まぁま‼」


信は今までに見たことのないくらいの笑顔を見せた。


「まぁくん……っっ」


ああ、そうだ。

まぁくんだったんだ。

私を助けてくれたのは。

守ってくれたのは……。

ずっと私を見てくれていたんだ……。


「ありがとうまぁくん……」


ぎゅっと抱きしめるとまぁくんは小さな手で私を抱きしめ返してくれた。

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