さくらの営み ─誓い─【オロチ】 (ページ34)

今日:30 hit、昨日:3 hit、合計:21,532 hit

三十四たとえページ34

家に帰ると晴愛さんはオロチさんが帰ってくるまで居ようかと言ったが、何時になるか分からないので帰ってもらった。

オロチさんが来るまでなんとかつかまり立ちする気にならないか工夫してみた。

だけど信はいつも私を見るばかりで一向にそんな素振りもみせない。

桜は伝い歩きもできるし、もうすぐ手放しで立てそうなのに。

知らないうちに甘やかしているのではないかと不安になった。

「まぁくん、おいで」

わざと信から離れ、呼びかけてみた。

ずっと目で追って来たが、一目散に来たのは桜だった。

桜が私の元に辿り着くとようやく信は重いお尻をあげてこちらへやってきた。

凄くのんびりした性格なのは分かる。

立つという感覚があればできるかもしれないと、信を抱き上げて両足を床につくようにして立たせてみた。

足の筋力がないというわけではなさそうだ。

そのままちゃぶ台の方に移動してつかまり立ちをさせてみた。

数秒耐えていたがすぐにずるずると落ちてしまった。

あとは信の意思次第に思える。

「……パパ遅いね」

とっくに昼は過ぎている。

それなのにオロチさんはまだ帰ってきていない。

これで何度目だろう？

1ヶ月前から土蜘蛛さんのところへ行くようになってから何日も約束した時間に帰ってこない。

「……今度土蜘蛛さんのところへ行こうか」

少ししてからようやくオロチさんが帰ってきた。

「すまない、遅くなった」

オロチさんは何食わぬ顔で家に上がった。

「……どこ行っていたの。もう夕方だけど。約束したのは昼だったよね」

「仕事が時間通りに片付かなかった。追加の依頼もこなさなければならない。多少のことは大目に見てくれ」

約束は約束だと言ってもオロチさんは受け入れてくれなかった。

何かぶつぶつ言って先にお風呂に入ってしまった。

怒りを必死に抑え込んでいると信がこちらへ来てじっと顔を見つめてきた。

いつもより不安そうな顔をしている。

「……ごめんね、まぁくん」

赤ん坊にも自分でない誰かの不安もわかるんだ。

桜と信は私が必ず守る。

たとえ1人になったとしても──……。