さくらの営み ─誓い─【オロチ】 (ページ32)

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三十二不安ページ32

「あー」

桜はちゃぶ台の上に置かれたおしゃぶりを取ろうとつかまり立ちを始めた。

信はじっと桜の方を見つめていたから私は急いで信をちゃぶ台の近くに移動させた。

「ほら、まぁくんもよぅちゃんみたいに立ってみよ」

桜の真似をしないかと思って練習を始めたけれど、ちゃぶ台の足を掴むだけでまだお尻が上がらない。

信に気を取られているうちに桜は伝い歩きも出来るようになってどんどん2人の差が開くことに不安をつのらせた。

ため息をつくと誰かが部屋の扉をノックした。

「A、いる？」

それは晴愛さんだった。

返事する間もなく家に上がり込んできた。

「歩く練習？」

「そう。よぅちゃんはもうすぐ歩きそうなんだけど、問題はまぁくんで……」

まぁくんは晴愛さんが来たことにより私の膝に顔を擦りつけてぐずり始めた。

「ごめんね、まぁくん人見知りするから……」

「1回預けに来た時大変だったんだよ。ご飯も食べてくれないし、遊ぶこともしないし」

「それはどこでもそう……」

桜は晴愛さんの足元にハイハイすると抱っこをせがんだ。

「同じように育ててるはずなのにこんなにも違ってしまうんだね」

「多少なら分かるんだけど、まぁくんの場合それ以上だから心配なんだよね。今だにつかまり立ちもしようとしないし、言葉だって喃語もほとんどないの。あってもくしゃみとぐずるくらいで……。でもそんなの言葉のうちじゃない。病院でも特に異常はなかったしどうしたらいいか……」

抱き上げてなだめても余計泣くばかりだった。

「まぁくんは何も興味を示さなくて、気を紛らわす方法がなくて……」

「そんなのあるのかなぁ……。ちょっと外行ってみない？何か変わるかもしれないよ」

晴愛さんに助言され、試しに外に出てみることにした。

できるだけ誰とも会わないように歩いた。

ぐずっていた信が元に戻ったのはいいが外の景色そっちのけでずっと私の顔を見上げている。

「桜だ。桜と同じ」

桜を抱いていた晴愛さんは桜の木を見つけると走ってはしゃいだ。

これではどっちが子どもが分からない。

「まぁくん、ほら見てみて。桜綺麗だよ」

信は少しだけ桜の木の方を見たがすぐに胸の中に顔を埋めてしまった。

桜の木の下で少し休もうと私と晴愛さんは腰をおろした。