さくらの営み ─誓い─【オロチ】 (ページ23)

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二十三あの日ページ23

震えた手でようやく脱がし、お風呂場に入って湯船に浸かった。

何か薬を入れているのか白く濁っていていい香りがしていた。

向かい合うように浸かったのはいいが2人で入るには少し小さくて、オロチさんは足を伸ばしていたが私は足を折りたたんで小さくなっていた。

「……誘ったのはAだろう。何故私より恥じる」

オロチさんは髪を解き、1つに結び直した。

「髪を結んでやる。A、後ろを向いていろ」

言われた通り後ろを向くとオロチさんは私の髪を結んでいたリボンを解き、手際よく1つにまとめた。

「あ、ありがとう……」

振り向こうとしたらオロチさんは後ろから私の肩を抱き、体を引っ張った。

オロチさんを背もたれにするような態勢になってしまった。

オロチさんは私の体をがっちりと抱いており逃げることはできない。

お湯がいい具合に温かく、焦ることを忘れてしまう。

長いため息が漏れた。

オロチさんとこんな風になるなんて思いもしなかった。

ここへ来た日のことからオロチさんとの思い出を思い出していく。

「そういえばオロチさんは……あの日どうして桜の世界にいたの。それに姿が変わっていたのはどうして？」

「……偶然迷い込んだとしか言いようがないが、もしかすると既に桜の力を開花させていたのかもしれないな。私の姿が変わったのは神樹の桜から霊力を得たからだ。あの日Aと出会った時に私が居た木がそうだ。あの日Aは私を見ても何も怖がらない、肝のすわった子どもだった」

オロチさんは腕を回し私のお腹に触れた。

「あの、オロチさん。私まだあの日のことを全て思い出した訳ではないの。オロチさんと出会って肩の傷と、その後オロチさんが私のことを抱きかかえて約束したことは思い出したけど……」

「……幼い頃の記憶など覚えていなくても無理はないことだった。だが私はAが覚えていなかったことを許せず、突き放すようなきついことばかりしてしまった」

この世界で出会ってからも充分に優しかったというとオロチさんは嬉しそうに抱きしめる力を強めた。

「あの日、Aは私をかばい肩の怪我を負ってしまった。迷い込んだのが戦闘中で敵に圧されていたから気が滅入って、人一人迷い込んでどうなったところで大勢の犠牲には代えられないと強く突き放したんだ。だが、Aは私に刃向かい誰かを傷つけることは良くないと言った。それで説得できるまで私の後をつきまとうようになってしまった」