二百五十六 友だちからの頼み事 ページ6
「この本、元からあったのですか」
「ううん、エンマ大王が貸してくれたのと書斎の。……ちゃんと許可は貰ってる」
本の背表紙を見る限り絵本とか、子ども向けのものばかりだった。
「俺、産まれてからずっと何も教えてこられなかったから当たり前のこともいまいちよく分からない。そしたら絵本っていうの貸してくれた」
晴愛さんは唯一手に持っていた絵本をぎゅっと抱いた。
「……俺が人間だった頃は身分の高い奴らは政略結婚っていうのが主流だったんだ。でも今って違うんでしょ?身分関係なく好きな誰かと結婚するんだよね?」
「基本はそう……だと思います」
晴愛さんは持っていた絵本を開き、深くため息をつくと乱雑にしめた。
「桜神の力を継続するには子孫を残すべきなんだ。だけど相手は同じくらい……強力な妖力を持ち合わせた相手との子じゃないと駄目なんだ。じゃないと桜神の力が薄れていくから……。でもAはオロチと結婚するんでしょ?」
「え、あ……っっええっ」
動揺する私にオロチさんは手で口を塞いだ。
「そんな怖い顔しないでよ。俺からは誰にも言うつもり無いし……。人間だった時、望まない結婚をしてる夫婦は嫌ほど見てきたから……それが正しいなんて思ってない。俺はAについてくよ。エンマ大王、このこと知ってるみたいだけどもし何か言われても断ってよね」
晴愛さんは不安そうな顔で私とオロチさんの顔を見た。
私は背伸びをして手を伸ばし、晴愛さんの頭を撫でてあげた。
「最初からそのつもりです。何も心配することなんてないですよ。この力も尽きる前に平和が訪れればいいのですから……」
晴愛さんは突然私を息苦しくなる程力強く抱きしめた。
「A、こんなに優しいのに死なせちゃってごめんね……」
「……私を殺した者はもう居ません。私、オロチさんと晴愛さんが居てすっごく幸せですよ」
子どもをあやすかのように私は晴愛さんの背中をとんとんと叩いた。
晴愛さんは少し体を離すとのけ者になっていたオロチさんの腕を引っ張って私と同時に抱きしめた。
「ずっとAのこと守ってあげて」
「……当たり前だ」
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剣城京菜(プロフ) - くーさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年4月26日 22時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 一話から一気に見ました!オロチさんにドキドキしますー!これからも頑張ってください!! (2019年4月19日 22時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - あーさん» ありがとうございます!! (2019年4月7日 16時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
あー - 何これ最高。更新頑張って下さい。 (2019年3月29日 20時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!! (2019年2月21日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年2月12日 18時