二百九十六 解放感と充足感 ページ46
全てを出しきり残っていたのは解放感と充足感だった。
部屋のベッドに降ろされるとオロチさんは本当に異常は無いかと聞いた。
無いと答えてもオロチさんの表情は晴れることはなかった。
「勝手にごめんなさい……」
「……いや、Aが無事ならいい。それよりも早く何とかできなかった私が情けない」
私は首を横に振ってオロチさんの腕を掴んだ。
「オロチさんは悪くありません……。問題は解決したのですから良しとしましょう。あとは少し休めば良くなりますから」
掴んだ手を自分の頬に擦り寄せる。
私から離れた手は頬を優しく撫でた。
唇にそっと指を這わせ、その感触だけを残していく。
「鍵を返してくる」
オロチさんはそう言って部屋を出ていった。
オロチさんと入れ違いに晴愛さんがやって来た。
「大丈夫？」
「はい、少し休めばなおります」
晴愛さんは床に腰をおろすと私に前世について尋ねてきた。
「前世と言われましても記憶は引き継いでいるわけではないようなので分かりません……」
「Aの家ってさ、凄く立派だったけど家系追ったら何か分からないの？」
晴愛さんは私の前世について興味があるようだった。
「私にも分かりませんが前世と先祖とでは違うと思います……。先祖は血を追うもの、前世は転生前のことだと把握しています。前世は何か証拠が残るわけではないので調べようがありません」
「……そうなのかな。でもきっと前世も可愛かったと思う」
晴愛さんはベッドに腕を乗せて私を見上げた。
「あ、今疑ったでしょ。俺、Aのこと尊敬しているんだからね」
「その割にはよく私に毒を吐いてますよね」
すると晴愛さんはわざとらしく笑って顔をそらした。
ごめんね、とあざとく上目遣いをする。
「……晴愛さんの方がよっぽど可愛らしいですよ」
私は小さくため息をついて晴愛さんの頭をくちゃくちゃに撫で回した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「妖怪ウォッチ」関連の作品
彼女は大王様に溺愛されてる『4』
妖怪ウォッチ使い、「『妖』魔界」ならぬ『魔界』にいざ魔入る！Part5
妖怪ウォッチ使い、「『妖』魔界」ならぬ『魔界』にいざ魔入る！ 〜番外編〜 その2！
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
剣城京菜(プロフ) - くーさん» ありがとうございます！！頑張ります！！ (2019年4月26日 22時) (
レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 一話から一気に見ました！オロチさんにドキドキしますー！これからも頑張ってください！！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - あーさん» ありがとうございます！！ (2019年4月7日 16時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
あー - 何これ最高。更新頑張って下さい。 (2019年3月29日 20時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます！！ (2019年2月21日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：剣城京菜 | 作成日時：2019年2月12日 18時
