二百八十八 何を救う為に ページ38
「大王に向かって腰抜けのチキンとは笑わせてもらった」
「盗み聞きとは趣味悪いですね。その顔で笑えるんですか？」
盗み聞きではなく勝手に聞こえてきたのだと百鬼姫さまは言ったが、この分厚い壁を挟んで聞こえるはずもない。
「今日は何の用でしょう」
さっさと帰って貰おうと要件を聞き出そうとしたが百鬼姫さまは威圧的にがんを飛ばした。
「ようやく妖魔界を取り戻す手立てが見つかったと、あのじじいから聞いてわざわざ出向いてやったがこれでは何も変わらんではないか。救う為に骨身を削るのに何をためらう」
百鬼姫さまは長い髪を翻し、踵を返した。
「以前来た時よりはマシになった。じゃが取り戻した領土はちっぽけなものじゃ。１寸にも満たぬ。正直お主は私より強い。偉い。生意気な奴じゃ。ついこの前まではつついただけで死にそうなミジンコだったくせに。何故私にひれ伏さぬ」
「ひれ伏すとは……別に私は自分のことを強くとも偉くとも思ったことなどは……」
そう言うと百鬼姫さまは振り向きざまに私の頬を叩いた。
「ばかなのか、死ぬのか？何故権力を使わない。その権力はなんの為にある。何を救う為にある。本当に世界を救う気なら骨身を削れ。削る骨身がなくとも限界まで削れ。権力を振るい、脅してでも手に入れるのじゃ。大人しくしていては取り戻せるものも取り戻せぬ」
叩かれた頬を擦って私は顔を上げた。
痛くて濡れた頬も冷たい風が直ぐに乾かした。
「危険に平気で飛び込んだお主ならできるはずじゃ、この出来損ないの小娘が」
「百鬼姫さま、あなたは……」
百鬼姫さまはつんと顔を背けると、人間界の道が本当はあったことを抗議しに来ただけだと言った。
「世界はたった１つの桜の木が命としてある。その命は桜の神であったお主の手によってどうすることもできるはずじゃ。せいぜい有効に使うがいい」
そう言って百鬼姫さまは遠い向こうの空へ飛んで行ってしまった。
私はその姿が見えなくなるまでずっと見つめていた。
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剣城京菜(プロフ) - くーさん» ありがとうございます！！頑張ります！！ (2019年4月26日 22時) (
レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 一話から一気に見ました！オロチさんにドキドキしますー！これからも頑張ってください！！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - あーさん» ありがとうございます！！ (2019年4月7日 16時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
あー - 何これ最高。更新頑張って下さい。 (2019年3月29日 20時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます！！ (2019年2月21日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：剣城京菜 | 作成日時：2019年2月12日 18時
