二百八十七 頂点に立つ者として ページ37
玉座の間に着き、扉を開けるとオロチさんの後ろ姿が見えた。
あまり良くない雰囲気にそれとなく割り込んでオロチさんの横に立つ。
オロチさんは横目で見て直ぐに視線を前にいるエンマ大王さまに向けた。
「オロチの言うことも分かる。屋敷にある禁書なら解決する手立ても見つかるかもしれないが、必ず対価が必要になる。都合のいいようにはいかないんだ」
「……承知の上で頼んでいることです」
その対価で私が不自由な身になってもかと言うとオロチさんは何も返さず、拳をぎりぎりと握るばかりだった。
「……エンマ大王さまは本当に世界を救う気はありますか。私が来るまでこの妖魔界はほとんど敵に支配されていたと言っても過言ではありません。あの現状を維持するだけで何も成果は得られず、ただ怯えて暮らす妖怪を横に自分はこの広い屋敷内で机に向かっているふりをしているだけでいいんですか。確かにエンマ大王さまは大王としての素質があるかもしれません。でも攻め入られることを恐れこちら側から攻め入ることを尻込みしては何も変わりません。多少リスクはあってもそれは世界を救う対価にすれば払う価値のあるものではありませんか」
エンマ大王さまはじっとこちらを見つめる。
「対価を恐れるのであれば頂点に立つものとしては相応しくありません‼ただの腰抜けのチキンってやつです‼」
私は踵を返し荒々しい足取りで玉座の間を出た。
「ちょっとA……」
「晴愛さんもオロチさんもついてこないで下さい‼」
声に振り返ることすらせずに、私は外に向かった。
扉の前に着いたとき、誰かの気配を感じた。
恐れなどなく扉を開けると見覚えのある黒い着物が目に入った。
濃い紫の長いかみに1つにまとめ、紫の髪飾りをしている。
そのどこか人を寄せ付けないオーラをまとった女の子は
「久しぶりじゃな、死人娘」
と言ってゆっくりとこちらを振り返った。
「……百鬼姫さま」
百鬼姫さまはじろりと私の全身を見た。
「死人にしては随分と小奇麗な格好をしておるのじゃな。顔は死人よりも死んでいるようじゃが」
「……そういう百鬼姫さまこそ。その着物に似合わないくらい愛想がありませんね」
どの口が言うかと百鬼姫さまはにたりと笑う。
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剣城京菜(プロフ) - くーさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年4月26日 22時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 一話から一気に見ました!オロチさんにドキドキしますー!これからも頑張ってください!! (2019年4月19日 22時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - あーさん» ありがとうございます!! (2019年4月7日 16時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
あー - 何これ最高。更新頑張って下さい。 (2019年3月29日 20時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!! (2019年2月21日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年2月12日 18時