二百七十六 失った者の望み ページ26
玉座の間に戻るとやけに静かになっていた。
婿候補はムスッとした顔で両膝をついていた。
「子どもたちの為ならばどんなことだってする。それのどこが悪いと言う」
大きな目はぎょろりとエンマ大王さまを睨む。
「その考え自体否定はしないがそれが悪事と言うなら話は別だ。罪は平等に与えなければならない」
私は扉を閉めてエンマ大王の後ろに移動した。
「何故私ばかり咎められる?罪の差はあれどどんな親だって子ども為に近しいことをしたことがあるはずだ。私はただ失いたく無いだけなのに何故私ばかり咎められる⁉」
また暴れようとしたが縄を持っていたオロチさんがそれを阻止した。
いくら話をしても反省する様子もない。
ただ時間だけが過ぎていく。
「……あなたの子どもたちは今、あなたに対して怖い、悲しいという感情があります。それが何故か分かりますか」
沈黙を破り、私は問う。
「それはあなたが子どもたちのことを見なくなったからです。わがままも本意ではない。ただ自分たちを見てくれなくなった父親の気を引きたかっただけで本当に欲しいものは目に見えるものではありません。あなたが盗んできたものを使っているところを見たことがありますか」
婿候補は顔を俯かせてしまう。
「あなたが盗んだベッドがあるのにあの子たちは地べたで寒そうに丸くなって眠っていました。盗んできたものをあの小さな体で返しに来てくれました。その本意が分かりませんか。大切な誰かを守りたいと思うことは良く分かります。ですが、自分を罪で重ねて犠牲にして傷つくのはあなたではなくあなたが大切に思う子どもたちです」
「……あんたに何がわかる。こんな裕福な場所で不自由なく生活して。分かってたまるものか」
私は思い出していた。
生前のことを。
両親のことを。
私は失わせてしまった。
「私はつい最近まで人として生きて来ました。ですが私は突然として両親を残し死にました。私の居なくなった家を見たこともあります。私は両親に悲しい顔をして欲しくない。いつものように笑顔でいて欲しいと、そう思いました。あの子たちも同じはずです。あの子たちが本当に欲しいもの、それは残された大切なものです」
婿候補ははっと顔をあげる。
するとオロチさんは縄を離し数歩後退した。
「A」
手招きされるまま、退室して晴愛さんの部屋に向かう。
晴愛さんの部屋に着くとちょうど晴愛さんたちが出てきた。
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剣城京菜(プロフ) - くーさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年4月26日 22時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 一話から一気に見ました!オロチさんにドキドキしますー!これからも頑張ってください!! (2019年4月19日 22時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - あーさん» ありがとうございます!! (2019年4月7日 16時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
あー - 何これ最高。更新頑張って下さい。 (2019年3月29日 20時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!! (2019年2月21日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年2月12日 18時