二百六十一 未定 ページ11
盗んだのがバレないうちに部屋に戻った。
「それにしてもその婿候補、陰気臭い」
晴愛さんは背後から紙を覗き込んでくすくすと笑った。
顔しか写って無いから想像はしにくいが、ぐるぐるの大きな目に大きな口からは下がはみ出していて、図体は相当大きそうだ。
その姿はまるでカメレオンのようだった。
「こんな顔した子どもなんて俺やだよ。顔が全てじゃないけどこいつは嫌。嫌い」
晴愛さんは子どもみたいに嫌嫌と言い続ける。
「はいはい……。私はオロチさん以外とは結婚なんてしませんから、ね?あ、付添人は晴愛さんにやってもらいたいです」
「……いいの?」
頷くと晴愛さんは私の羽織の袖を掴んでにこにこと笑った。
その顔は本当の晴愛さんに近いのだろうか。
「晴愛さんがいいです」
晴愛さんは嬉しそうに後ろから抱きついてぴょこぴょこと跳ねた。
「俺、絶対Aの付添やる。相手は絶対オロチね。オロチはドレスと白無垢どっちがいいっていうかな。Aはどっちがいい?」
「気が早いです……。まだ結婚まで至るかわからないのに……。でももし仮に結婚が叶うのなら私はタキシードも着物もどちらのオロチさんも見たいです。何を着ても絶対素敵です……」
想像したらなんだか体が熱くなってきてしまった。
「結婚……結婚……ですか」
これ以上想像しては爆発してしまいそうだ。
落ち着こうと頬を叩いていると晴愛さんは抱きついたまま私を扉の前に立たせた。
「だってさ」
晴愛さんが扉を開けるとそこにはオロチさんが居た。
しかも顔を真っ赤にしていた。
どうやら話を聞いていたようだった。
「あはは、じゃあ俺はこれで失礼するよ」
晴愛さんは私たちを残しうきうきしながら帰っていった。
「す、すみません」
「……構わん」
オロチさんを部屋に入れると鍵をしっかりかけ、普通を取り戻そうと深呼吸をした。
「奴にも困ったものだ。今からとは気が早すぎる」
「そう、ですよね。決まった事ではありませんし……」
オロチさんはこちらを振り向くと呆れたようにため息をついた。
「まだ未定だ。だが、いずれ叶えてやる。……それまで待っていてくれるか」
そう言ってオロチさんは私の髪を耳にかけ、頬を撫でた。
「待ってますね。ずっと、ずっと──……」
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剣城京菜(プロフ) - くーさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年4月26日 22時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 一話から一気に見ました!オロチさんにドキドキしますー!これからも頑張ってください!! (2019年4月19日 22時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - あーさん» ありがとうございます!! (2019年4月7日 16時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
あー - 何これ最高。更新頑張って下さい。 (2019年3月29日 20時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!! (2019年2月21日 17時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年2月12日 18時