二百十八 もう1つの名前 ページ18
妖怪はゆっくりと手招きをした。
別の誰かかと思い辺りを見回したが、そうではないらしい。
「……なんでしょう」
恐る恐る近付くとその妖怪は4つの目で私をじっと見つめる。
「私はよつめ。あなたの運命の人を見てあげましょう」
「……後で高額請求するつもりですね。私騙されませんよ」
立ち去ろうとしたらその妖怪はいままでの落ち着きを無くし、慌てて私の腕を掴んだ。
「そんなもの必要ありません〜っ。ただ読命術をまだ使えるか試したいだけなんです〜っっ」
「練習ってことですか」
その妖怪、よつめさんはうんうんと頷いた。
「不運と言って壺を売りつけるとかは……」
「何も必要ありません。ただあなたの名前などを読ませてもらえるだけでいいんです」
あまりにも必死なので去るのをやめ、その場に留まることにした。
よつめさんはほっとしたような顔をして私の顔を見つめた。
「あなた……名前はAさんと言うのね。死ぬ前の名前は桜風A……」
「正解です」
名前くらいはもしかしたら誰かが口にしたのかもしれない。
「……もう1つ、見えます」
よつめさんは不可解なことを言った。
「名前がってことですか」
「はい。どんな名前かまでは分かりませんがもう1つ、死ぬ前の前に見えます。前世、というものでしょうか……」
よつめさんは大きな目で私の顔を覗き込む。
「産まれたのは〇〇年3月……日」
頷くとよつめさんはほっと胸を撫で下ろした。
「最後にあなたの運命の人を読んでみせましょう」
「運命の人って……?」
「運命の人と言えば一括にされてはいますが、運命の親友、運命の執事、赤い糸で結ばれた運命の恋など様々です。残念ながら望むものを確実に見ることはできませんが」
よつめさんは目を見開き、全ての目で私をじっと見つめた。
全てを見透かされたような感覚があった。
「……宝石のような綺麗な緑色。それがあなたの運命の人でしょう。身に覚えは?」
「……ありません」
よつめさんはうーんと唸るとやっぱり力がだいぶ衰えてしまったと肩を落としていた。
「もう一度修行しに行くしかありませんね。Aさん、お付き合いいただきありがとうございました。では」
よつめさんはそう言って横丁の暗がりの中へ姿を消してしまった。
「緑色……ね」
思い当たる節はないが、もしかしたらこれから出会うのかも知れない。
「……早く戻らなきゃ」
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剣城京菜(プロフ) - aruya100さん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年2月8日 9時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
aruya100(プロフ) - いつも見させていただいてます。更新頑張ってください!期待してます! (2019年2月4日 23時) (レス) id: b60ccdc28b (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年1月30日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 作品楽しませていただいてます。続き頑張って下さい! (2019年1月30日 8時) (レス) id: 01053ecf80 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - 剣城京菜さん» 頑張ります...! (2019年1月23日 19時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年1月21日 21時