二百十七 祭り ページ17
妖魔界につく頃にはすっかりあたりは暗くなってきていた。
門をくぐる前、聞き慣れない音が遠くの方から聞こえた。
聞き慣れないはずなのにどこか懐かしい。
オロチさんは何か知っているようだった。
門をくぐり歩いて妖魔界に近づくに連れ、その音は確かなものになっていく。
「太鼓の音?あと大勢の話し声……」
最後の門をくぐり抜けたとき、その音のしょうたを目の当たりにした。
赤と白の提灯が辺りを明るく照らす。
太鼓の他に笛も鳴らし、それはいわば祭り囃子だった。
妖怪たちが賑やかに踊り笑う。
屋台からはいい香りが漂ってくる。
「……お祭り?」
オロチさんは頷き私の手を握ったまま、賑やかな群れの中に紛れ込んだ。
群れから抜け出すと誰かがこちらに手を振っていたのが見えた。
「えんらえんらさんに土蜘蛛さん……」
「おかえり〜。びっくりしたでしょ?今日は妖魔界の夏祭りなのよ〜」
えんらえんらさんに肩を押され、土蜘蛛さんの隣に座らせられた。
オロチさんは私の前に、えんらえんらさんは土蜘蛛さんの前に座ると既にお酒を片手に酔っていた土蜘蛛さんが私に漆塗りのおちょこを手渡した。
「オロチは酒だけは弱くまともに酌み交わしたことがないのだ。だから今日はAが付き合え」
「私、未成年ですので」
土蜘蛛さんは相当酔っているらしく、聞く耳持たず、おちょこに酒を注いでしまった。
「妖怪になったら年なんて関係ないわよ〜」
えんらえんらさんも少し酔っているらしく頬が少し赤かった。
惑わされるもんかとおちょこをテーブルに置く。
「……土蜘蛛殿、代わりに私が」
オロチさんは私が置いたおちょこに手を伸ばす。
「せっかくだから出店見てくるといいわ〜」
えんらえんらさんは2人に聞こえないようにこっそり耳打ちをした。
「オロチは適当に酔わせとけば感づかれることもないから安心してプレゼント探しに行くといいわ〜」
えんらえんらさんは私を群れの中に押し込んでしまった。
「どこ行けばいいのかな……」
正直今自分がどこにいるか分からない。
夜であることと見慣れない物、妖怪が沢山いるせいで感覚が狂っている。
決して迷子と言うわけではないのは確かだ。
流れに身を任せ歩いていると屋台の列から外れたところに怪しげな妖怪がぽつん、と立っていた。
大きな頭に目が4つ。
紫の着物に数珠を首にかけていた。
「そこのあなた」
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剣城京菜(プロフ) - aruya100さん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年2月8日 9時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
aruya100(プロフ) - いつも見させていただいてます。更新頑張ってください!期待してます! (2019年2月4日 23時) (レス) id: b60ccdc28b (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年1月30日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 作品楽しませていただいてます。続き頑張って下さい! (2019年1月30日 8時) (レス) id: 01053ecf80 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - 剣城京菜さん» 頑張ります...! (2019年1月23日 19時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年1月21日 21時