二百四十九 甘美な色 ページ48
「今日はこちらで寝泊まりするといい。部屋は好きに使え」
その部屋を出て最初に目にうつったのは白く大きい丸い月だった。
真相は真意でなくただの事柄。
先を行く者に私は呼びかける。
振り向いても合わない目線は月を映す。
真相と真意が別物であることは分かっていた。
「本当は……」
そう、呟いた金色の目はふいにこちらを見る。
「……合わせる顔がなかった。私はAから逃げ出した」
「……昨晩のこと、ですか」
白い肌は段々と赤みを帯びていく。
「すまない……。私がしたことは取り返しのつかないことだ」
「それでオロチさんはどうしたいのですか……?もう私とは居てくれないのですか?」
オロチさんはぐっと息を飲み込んだ。
「私は……拒否なんてしませんでしした。それをしなかった理由はなんだったと思いますか」
私はオロチさんの着物の端っこを掴んだ。
「取り返しのつかないことをした。だから私をもう守ってくれないと、そういうことですか?私は嫌です。私を守ってくれるのはオロチさんじゃないと嫌です。オロチさんが私にしたことはオロチさんにとって嫌なことでしたか?本当はしたくなかったことですか」
オロチさんは何度か口に出そうと唇を動かした。
私はその口から言葉を待ち口をつぐむ。
「したくなかったことでは………ない」
そう言われたとき、体がすっと力が抜けたような気がした。
「……だが、そういう関係でもない男女がすることではなかった」
つまりオロチさんが気にしていたのはそこらしい。
私がどう言っても罪悪感は拭いきれないようだ。
「……前に喧嘩して私が襲われそうになったことありましたよね。オロチさんが連れ戻してくれたあとに私にしたことは昨晩オロチさんがしたことよりももっと過激でしたよ」
そう言うとオロチさんは3歩程後ろに下がってしまった。
「し、知っていたのか……っっ」
「うっすらとですが……」
オロチさんは息を深く吸い、私の前に立つ。
「オロチさんは嫌でしたか……?」
急に怖気づいてしまった私は震えた声で涙を溜めた。
「そんなこと思ったことなどない」
オロチさんは指の先で涙を拭い、その手を私の頭の後ろに添えた。
「オロチさん──……っっ」
私の大好きなその金色の瞳は私の瞳の色と混ざっていく。
それはどんな色よりも甘美な色だった。
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剣城京菜(プロフ) - aruya100さん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年2月8日 9時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
aruya100(プロフ) - いつも見させていただいてます。更新頑張ってください!期待してます! (2019年2月4日 23時) (レス) id: b60ccdc28b (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年1月30日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 作品楽しませていただいてます。続き頑張って下さい! (2019年1月30日 8時) (レス) id: 01053ecf80 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - 剣城京菜さん» 頑張ります...! (2019年1月23日 19時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年1月21日 21時