さくらの営み 4【オロチ】 (ページ9)

今日:3 hit、昨日:10 hit、合計:31,195 hit

百五十九策略ページ9

「……いってしまいましたね」

振り返るとオロチさんはつかつかと歩み寄り、私の唇を手の甲で強く擦った。

「何故抵抗しない……‼そういう気持ちが本当はあったのか、それとも馬鹿なのか……⁉」

「抵抗もなにも……いたた」

更に強く擦り付けるオロチさんの腕を力いっぱい引っ叩き、唇をおさえながら2メートル程離れた。

「別にキスなんてしていません……。オロチさん視点からならそういう風に見えたかも知れませんが、あれはたぶんヒカリオロチさんがからかっただけかと……」

そういうとオロチさんは顔を真っ赤にして頭を抱えながらしゃがみ込んでしまった。

「……そうか。策略にまんまと騙された訳か……」

「……オロチさん変ですよ」

そろそろと近づいて顔を覗き込んでみる。

「……純粋なんですね。顔真っ赤です」

オロチさんは眉を寄せると私のおでこを指先で突いた。

「だから痛いですって‼」

「……私たちはよく揉めるな」

オロチさんは私の頭を乱雑に撫で立ち上がると屋敷に入っていった。

「それはオロチさんが不器用で意地悪だからですよ」

そう呟いたもののオロチさんには聞こえていないのだろう。

誰かに対してなにも言えない私がこんな風に怒ったりできるのは多分、オロチさんだからなのだと思う。

それが何故なのかはまだ理解はできないけれど、どうかいい意味であって欲しいと願うばかりだった。