百九十九 一生の願い ページ49
ふいに目を覚ました。
不気味なほど真っ暗で、眠れなくなってしまった。
窓の隙間から射す僅かな光の先に見えたえんらえんらさんは気持ち良さそうに眠っている。
ぼんやりとしていると外からかたん、といった音が聞こえた。
まさかまた黒魔がと思い、毛布を被ったまま手探りで階段を降りた。
寝ている皆を踏んづけないように扉の前に辿り着くと、私は立て付けの悪い扉を少し開けた。
外には誰もおらず、月明かりが家の影を作っていた。
「そこで何をしている」
この声はオロチさんだ。
だけどオロチさんの姿はない。
周りをきょろきょろしていると、家の影の上に人影を見つけた。
見上げるとオロチさんが屋根の上からこちらを見下ろしていた。
「眠れなくなりました……」
そう言うとオロチさんは私に手を差し出した。
迷うことなくその手を取ると、オロチさんは軽々と私を引っ張りあげた。
「オロチさんはここで何をしているんですか？」
落っこちそうになりながらオロチさんの隣に座る。
「見張りだ。全員呑気に寝ている訳にはいかないだろう」
「それもそうですね……。私はいつからですか？」
オロチさんは首を横に振り私には無いと答えた。
「説明するまでもないだろう。もし引け目を感じるのであれば私と一緒に見張りをしてくれるか」
「そうします」
私たちは背中合わせに座り直し、見張りを始めた。
「黒魔は妖怪と違って気配を感じにくいと言っていましたが妖怪はわかりやすいんですか？」
「ああ、妖怪であれば多少なりとも妖気を持つ。私はその妖気の強さなどを分析し、距離と誰であるのかがわかる。上級妖怪となれば妖気を消すこともできるが黒魔は妖怪とは違ったもので分かりづらい。妖気を消すことはAでも出来るはずだが……今は無理だな」
オロチさんが言うには今は指輪の力でおさえてはいるが、それが無いと妖気がだだ漏れらしい。
修行すればいつかはできるようになるようだ。
「じゃあオロチさんみたいに空を飛べることもできますか？」
「……いや、それは無理だな。これは誰でもできるわけではない。妖怪となったときに自然と備わっていたものだ。そもそもAは高いところは苦手だろう」
「そうでした……」
オロチさんは呆れたようにため息をついた。
「空は飛べなくとも飛躍力は上がっているようだが……」
「じゃあ、教えて下さい。強くなる為の方法。……一生のお願い」
それを言わないと気がすまないのかとオロチさんはふっと笑った。
「一生は無限です」
「……何度だって一生を使えばいい」
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作者名：剣城京菜 | 作成日時：2018年12月10日 18時
