百九十五 安心 ページ45
「こんばんは……」
あとに続いてオロチさんと土蜘蛛さんが戻ってきた。
「あらあら、顔に泥がついているわ〜」
えんらえんらさんは指先で私の頬を擦るとにこっと笑った。
「こんなむさ苦しいところに女の子が1人なんて不安よね〜。近くで露天風呂見つけたのよ。ご飯を食べる前にお風呂に入りましょ〜」
頷くとえんらえんらさんは私の手を引っ張って外へ連れ出した。
「どこまで行くんですか……?」
えんらえんらさんに連れられ、森の奥を進んでいく。
「すぐそこよ〜周りは木で覆われているから丁度いいと思って〜」
少しの間進んでいくと、木々の隙間に青色の火の玉の光が見えた。
「わ……凄い……」
そこへ出ると直径9メートル程の温泉があった。
浴槽は石でできていて、木々が見えないように隠している。
もくもくと白い煙はたち、青色の火の玉がほんのりと灯りを灯す。
上を見上げれば夜空が見えた。
「夜空を見ながらお風呂に入れるなんてロマンチックよね〜」
えんらえんらさんはうっとりとしている。
湯船に手を入れてみるととても温かかった。
そして少しばかりぬめりがあった。
「つるつるになりそう……」
「ここの森の水は美肌効果があると言われているのよ〜。きっと今より綺麗になれるわ〜」
えんらえんらさんはそう言って私の羽織を脱がした。
「で、でも……私外で服を脱ぐのはちょっと……」
「大丈夫よ〜。Aちゃんには厳重すぎる警備がついてるもの〜」
えんらえんらさんは強引に帯を外し、着物を肩から落とした。
「早く湯船に浸からないと体冷やしちゃうわよ〜」
ひん剥かれては抵抗できないと私は急いで下駄と靴下を脱いで湯船に浸かった。
条件反射でふう、と息をつく。
不思議なくらいに気持ちが良かった。
「私タオル持ってくるの忘れてたわ〜。取りに行くからゆっくりしててね〜。近くにオロチがいるから安心してね」
えんらえんらさんは返事も聞かずに姿を消してしまった。
「……お、オロチさんいるんですか……?」
「……あぁ」
姿は見えないが、近くにいるようだ。
「強引ですまないな」
「オロチさんが謝ることではありません……。お風呂気持ちいいですし大丈夫です」
オロチさんがいることだけでどうしてこう安心するのだろう。
目を閉じ、考えてみる。
「たぶんオロチさんだから……?」
「……何か言ったか」
何もないと答え、私は誤魔化すようにバシャバシャと音を大げさに出して顔を洗った。
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時