百九十三 未来の想像 ページ43
「感情って我慢し続けるとたまに融通が効かなくなります……。そうなると手がつけられません。難しいことです。でも自分を追い込まなくていいと思います……。その、もし……もし私ができることなら話を聞くだけでも、なんでもします……どう、ですか?」
私はちらりとオロチさんの顔を覗き込んだ。
「オロチさんはいっぱい頑張ってます。不器用ですけど、私にいっぱい良くしてくれました。私、凄く嬉しいと思っていて……それで私もオロチさんに何かしてあげたいんです」
オロチさんはきょとんとしていた。
やっぱり私では役にたてないのだと諦めて顔をそらすと突然オロチさんは私の手に触れた。
手のひらを重ね、指を絡ませる。
オロチさんはそれを自分でまじまじとみる。
そして
「そうか……そういうことか……」
と呟いた。
当然私は何がなんだか分からなかった。
オロチさんは手を離すと触れた手のひらをぎゅっと握った。
「Aがここに来た理由は分かっている。Aの意志は尊重するつもりだ。だが、どうか無理なことはしないで欲しい」
「……オロチさんも。オロチさんは戦って私の世話もしてるので過労です。たまにはお休みしてもいいと思います」
「……好きでやっているだけだ」
オロチさんは立ち上がると私に手を差し出した。
その手を受け取り腰をあげると、見ていた空へ息を吐いた。
「オロチさんは真面目ですね」
「……それはわざと言っているのか」
「え?」
オロチさんは頭を抱え、見ていた空へため息をついた。
「……とても静かです」
耳をすますと風の音だけが聞こえる。
まるで誰も居ないようだ。
「領土を拡げることに成功したら隠れていた妖怪たちは表へ出るだろう。そうすれば以前のように賑やかになるはずだ」
「……賑やか。じゃあ頑張らないと、ですね」
頷きあい、私たちは未来を想像する。
知っている風景と、想像する風景。
それがぴったりと合わさるものなのかは未来でしか分からないけれど、求めるものは同じ。
それぞれで意志をかため、約束とともに誓い合った。
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時