百八十五 素の表情 ページ35
長湯をしてお風呂場を出ると丁度オロチさんも出たところだった。
「今日はもう寝るのか」
オロチさんのほっぺはほんのり赤かった。
「まだ寝るのには早いですよ。疲れたのでゆっくりはしますけど、寝るのはもう少しあとにします」
「……そうか。なら説教は明日にするよう伝えておく」
「えっ、説教は確定ですか‼」
ショックを受けているとオロチさんはおかしそうに笑っていた。
笑われているのに何故か嫌な気はしなかった。
「……オロチさん最近よく笑いますね」
自覚はしていないようでオロチさんは眉を寄せ首を傾げた。
私は出会ったばかりのオロチさんの顔を真似て眉をぎゅっと寄せて不機嫌そうな顔を作ってみせた。
「真似なんてしなくていい」
今度は恥ずかしそうに笑う。
からかいすぎたか腕を小突かれてしまった。
「Aこそ随分と笑うようになったな。以前は無愛想で憎たらしい口ばかりだった」
「それ気のせいですよ。私はいつだって表情豊かで素直です」
オロチさんは無視して部屋の扉を開けた。
「あまり夜ふかしはするな。昼頃に様子を見に来るから外に出る用事があれば私のところに来い」
洗ったばかりのふわふわの髪を翻しオロチさんはこの場を去った。
後ろ姿を見えなくなるまで私はじいっと見つめていた。
「オロチさんだけ、特別……」
きゅうっと苦しくなる胸をおさえ私は部屋の扉を閉めた。
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時