百八十四 守ってくれる理由 ページ34
溢れた涙を着物の袖口で拭い隠す。
泣いていないふりをしては収集がつかない程、気持ちが溢れてくる。
「塞ぎ込んでは前に進むことはできない」
オロチさんは私の両腕を掴んでそっと引っ張った。
「酷い顔だ。何故我慢をする」
「だって……泣いたら迷惑になると思って」
「私では駄目か」
その優しさに吸い寄せられるように私はオロチさんに身を寄せた。
ぎゅっと体を引き寄せられると不思議と安心感を覚えた。
どんどん溢れてくる感情に身を任せて泣き叫んでも私を拒むことはなかった。
ひとしきり泣いたあと、オロチさんは私の顔を見て酷い顔だと笑った。
「……帰りましょう、オロチさん」
「ああ」
そして私は今の居場所へ帰るために帰路についた。
空はオレンジ。
少し温かい風が冷えた体を温めた。
季節は夏へ変わりゆく。
名残惜しくとも振り返ることなく私は前へ歩き出す。
「あの、オロチさん」
少し先を歩くオロチさんを呼び止めるとオロチさんは足を止めた。
「オロチさんはどうして私を守ってくれるのですか?約束したからとかじゃなくて、約束するまでの過程といいますか……。もっと根本的な何かがあるのかな、と思ったのですが……」
オロチさんは考える素振りをみせたあと
「……秘密だ」
と答えた。
「そう、ですか……」
妖魔界の屋敷に着くまでずっと言葉を交わすことはなかった。
期待していた言葉も自覚することはできず、少しだけ肩を落とすだけ。
屋敷に着くとぬらりひょんさんが凄い形相で睨んできた。
原因は私が勝手に抜け出したからだろう。
そそくさとオロチさんの背中に隠れるとオロチさんは、私が力を使い果たして立っているのもやっとだと伝え、お説教を回避してくれた。
「休む前に風呂に入って体を温めろ」
「……オロチさんも」
土砂降りの中戦っていた為、当然2人ともびしょ濡れだった。
屋敷の奥にあるお風呂場に着くと私はオロチさんと別れた。
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時