百七十六 遠吠え ページ26
「他に何か情報はないのか」
「えっと、部隊を結成すると言っていました」
下駄を履き直すとオロチさんは駅のある方へ歩き出した。
遅れないようにいつもより早く歩く。
「どのみち危険であることは確かだ。何か異変があれば迷わず伝えろ」
「分かりました」
私は前、後ろ、上も下にも神経を張り巡らせた。
「わんわん‼」
すると目の前を散歩していた小さな犬が吠えだした。
「……端を歩け」
オロチさんは私が壁に寄るように距離を詰めた。
びくびくしながら通り過ぎてその小さな犬が吠えている理由に不審感を覚えた。
小さな犬は追い越しても私たちに向くことはなかった。
「オロチさん、なんか変です……」
横を見るとオロチさんは居なかった。
振り返るとオロチさんは背を向け、遠くをじっと睨みつけていた。
「わんわん‼」
今度は近くに住んでいる大型の犬が鎖をピンと伸びして吠えだした。
それをきっかけにあらゆるところから犬が狂ったように激しく吠える。
まるで何かを警戒するように。
「ゥオオーーン……」
尾を長く引く遠吠えがさくらニュータウン中に響いた。
「A、奴は近くにいる。私から離れるな」
私は急いでオロチさんの元へ駆け寄った。
遠吠えは何度も繰り返される。
『蛇の小僧よ、あいも変わらず可能性のない約束を覚えているのか?』
ゾッとするような低い声が耳元で響いた。
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時