百七十四 探し人 ページ24
「ケータ、Aが言うには大型の黒魔が現れたらしいにゃん」
「はい……それと探し人も……」
付け足すと天野君は私に探し人について聞いてきた。
「人ではなく妖怪なんですけど。昨日人間界に行ったっきり戻って来ないんです。すぐ済む用事だと思っていたので心配で……。とても強い方なので大丈夫だとは思うんですけど不安で……」
「もしかしてその方に惚れちゃってんじゃないですかぁ〜？」
ウィスパーさんは肘で私の腕をつつく。
それをジバニャンさんは叩いて私から遠ざけた。
「わ……私には、まだそう言うのは良く分からない、です……」
"惚れた"という言葉を聞いたとき、浮かんだのはオロチさんのことだった。
頭がぽやんとして上手く思考が回らない。
すると突然部屋の中に花びらが溢れ出した。
犯人は紛れもなく私だった。
「うわわ、何これ‼」
「すみません……私、力が制御できないんです。一度出ちゃうとしばらく止まらなくなるので……。この力を制御する為のものを私が捜している方が人間界に取りに来たのですが……」
あっと言う間に花びらは腰まで溜まってきた。
「窒息するにゃん〜っっ」
ジバニャンさんが近くにいた私の頭によじ登ってきた。
重さに耐えられず尻もちをつくと、ベランダの窓を誰かが叩いた。
「こんな時に誰？」
天野君は花びらをかき分けベランダの鍵を開けた。
「ケータ、これは一体どういう事だ」
聞こえてきたのはオロチさんの声だった。
私は急いでベランダの方へ花びらをかき分けた。
「オロチさん……‼」
やっと上半身だけ出るとオロチさんは目を丸くして私を見下ろした。
「大人しく待っていると約束しただろう」
オロチさんは私の腕を掴み花の海から引っ張り出した。
「もしかしてAの言っていたのってオロチだったにゃん⁉」
「友よ。連れが迷惑をかけた」
オロチさんは片膝をついてジバニャンさんに頭を下げた。
「迷惑だにゃんて思ってないにゃん。それより黒魔が人間界に入ってきたってAから聞いたにゃん」
「大型の黒魔だそうです。すみません……危ないと思ったらつい。オロチさん帰って来なかったので何かあったのかと思って……」
オロチさんは立ち上がると懐から何かを取り出した。
「黒魔のは関係はないが少し寄り道をしていたら面倒事に巻き込まれてな」
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作者名：剣城京菜 | 作成日時：2018年12月10日 18時
