百七十一 赤い猫 ページ21
木札と紐が解かれると黒い壁が現れ、横に円を描くように私を囲った。
ぐらん、と上か下に動いた感覚があった。
少しして真っ暗闇から縦筋の光が入った。
「ここは……」
光の中は緑色、森の中。
そこは馴染みのある場所だった。
「おおもり山……」
立ち上がって外にでる。
振り返るとご神木が縦に割れていた。
どうやらこのご神木が妖怪エレベーターというものらしい。
割れ目がぴったりと閉じるのを見届けて、私はオロチさんを捜す為に走り出した。
おおもり山からおりたものの、どこへ向かえばいいのか分からない。
途方なく歩いていると住宅街に入った。
通りすがりに何人か人とすれ違ったが誰も私を認識しなかった。
孤独感を抱えながら私は目的地の予想をたてた。
住宅街にいるのはきっと違う。
だけど妖怪関連であることは確かだ。
そうすると普通の人間には見えないのかもしれない。
例えば路地裏だったり、普段目につかない場所にあってもおかしくはない。
ここから離れ別のところを探そうと振り返った瞬間、足に何かが当たった。
「いったいにゃ〜」
「ぁ、ごめんなさい……」
足元では腹巻きをした赤い猫が尻もちをついていた。
「オレっちがよく前を見ていなかったのが悪いにゃん。……というよりこのあたりでは見ない顔にゃんね。オレっちジバニャンだにゃん、よろしくにゃん」
ジバニャンさんは立ち上がると私に握手を求めた。
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時