さくらの営み 4【オロチ】 (ページ3)

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百五十三力の制御ページ3

ふわっと髪が風になびく。

まぶたの裏に淡い光が浮かんだ。

それでも意識を集中させ続けると、手のひらの妖気晶が小刻みに震えだした。

「──……うわ‼」

ばりん、と爆発するような音に驚き尻もちをついた。

目を開けると妖気晶は粉々に砕けていた。

部屋の中は何故かめちゃくちゃで、カーテンは外れ椅子も倒れている。

しまいには花びらがそこら中に散らばり、今も上からひらひらと舞っていた。

「す、すみません……」

この部屋に居た者全ては呆然としていた。

「……あ、あぁ。構わない。それより怪我はないか」

先に口を開いたのはエンマ大王さまだった。

「想像以上の力だな」

「ですがコントロールができないのでは意味がありません」

エンマ大王さまとぬらりひょんさんがこそこそと話している間、私は散らかしてしまった部屋を見回していた。

「これ、桜……？」

手元にあった一房を手に取る。

それは昔教科書で見たのと同じ形をしていた。

「……桜には治癒の力がある。Aが人間界に帰るまでの間、何度か無意識に力を使っていた。そのたびに桜の花びらを残していた。曖昧な存在で力を使えば体力は通常より大幅に減る。１年経っていたのはその為だ」

そう言ったのはオロチさんだった。

「だがAは普通とは違うなっ！何故なら黒魔の傷でさえ治せるからきっとこの世界で１番強い‼」

ヒカリオロチさんは目を輝かせた。

「……」

自分の手のひらをじっと見つめる。

今までの自分とは違うもの。

少しだけ怖かったけど、治癒の力は誰でも治してあげられる。

「……血だ」

自分の手のひらから手が少しだけ滲んでいた。

きっと割れた妖気晶で切ったのだろう。

大した傷ではないと放っておくことにした。

散らかった花びらをかき集めていたオロチさんが不意に私の前にしゃがみ込む。

「手を切ったのか」

オロチさんは手を取ると傷と私の顔を交互に見た。

「少しだけ……でもこのくらいすぐ治る……んですか？」

「傷の再生能力は人間も妖怪も差はほとんどない。だがAの治癒の力を使えばこれ程の傷ならすぐ治ると思うが」

「……そっか」

目を瞑り意識を傷口に集中させる。

治れ、治れと何度も念じた。

だけど、傷口は塞がらなかった。

ただ花吹雪を起こし、せっかく集めた桜の花びらをまた散らせただけだった。